砂防で遠隔施工拡大 施工者・監督員向けに要領
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国土交通省は、遠隔施工の活用拡大に向けて、施工者と監督職員向けに導入時の事前準備や工事計画、施工管理の要点を示す要領案をまとめた。これまで大規模噴火や斜面崩壊といった災害現場で活用されていた遠隔施工を通常工事にも取り入れるため、まずは導入事例の豊富な砂防工事で先行して試行例を増やす。
国交省は、2024年度に打ち出したi-Construction2・0の一環で、当面5年間で砂防工事の現場を対象に遠隔施工の活用を拡大する方針を示していた。遠隔施工は、雲仙普賢岳の噴火や熊本地震など、主として災害現場や火山砂防地域で導入が先行。近年は、通常工事であっても、土砂災害の危険が高く施工中の緊急避難が容易でない現場などで遠隔施工を推進している。具体的には、災害復旧で土石を撤去した後、砂防堰堤を施工する工事などが対象となる。
要領案では、遠隔施工が実施可能な工種や主要な技術の概要、事前準備、情報収集、工事計画、施工管理の留意点を記載。地方整備局に発出した他、今後は都道府県などにも周知し、活用を促していく。
技術の開発当初、遠隔施工が可能な建設業者は大手ゼネコンに限られていた。近年はICT技術の普及、コストダウンもあって地域建設業の手掛ける工事規模でも無人化施工の導入例が増えている。要領案には高速通信技術を適用した低遅延・多数同時遠隔操作のような最新技術は反映せず、標準的なネットワーク型遠隔操作の無人化施工技術を記載した。
遠隔施工を適用可能な工種としては、▽除石工▽大型土のう積工▽ 構造物設置工▽砂防堰堤工―を基本とする。直接目視や映像による視認、ネットワークを介した操作など実施方式に応じて必要な機材を示す。
使用できる建設機械や通信環境、映像設備などを整理した。遠隔施工に特有の機材調達、現地への輸送期間や、仮設計画・工程計画などの決定に必要な項目もまとめた。
遠隔施工の導入により現場の安全性を高める他、オペレーターが山間部の現場まで移動する時間を減らす生産性向上の効果も期待できる。将来的には過酷な屋外作業を減らして就労環境の改善、担い手の確保にもつなげる。
要領案と合わせて、砂防現場でのデジタル技術活用や、遠隔施工の事例集もまとめた。遠隔施工の導入に当たっては、こうした事例も参考にしてもらう。
各地方整備局の技術事務所は、災害対応を想定して遠隔施工に対応した建設機械を保有している。25年度以降、これらの建機を建設業者に貸与し、通常工事で遠隔施工を実施することを想定した積算基準の作成も検討する。