インフラ危機④建設業が地域をけん引すべき

中央

家田仁(いえだ・ひとし)氏

 「気付かないうちに進行する生活習慣病のようなもの」。埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けた有識者委員会の座長を務める家田仁政策研究大学院大学教授は、インフラの老朽化をこう形容する。地域やインフラ分野をまたぐメンテナンス体制を構築する「地域インフラ群再生戦略マネジメント」を実効性あるものにするため、家田氏は行政と建設業界、そして地域住民の意識を転換する必要性を説く。  ―八潮市の道路陥没事故から、どのような教訓を得るべきか。  「道路や建物は、すぐに対策をしなくても明日使えなくなるわけでない。しかし、修繕せずに放置すれば徐々に劣化が進み、人体で言えば大動脈のような幹線道路、大静脈のような下水道がいつしか壊れてしまう。今回の道路陥没はその一例だ」  「すぐには壊れないからと問題を先送りにすれば、こうした重大な事故につながる。改めて、インフラメンテナンスの重要性を多くの人々に理解してもらい、『自分の住む場所でも同様の事故が起きるかもしれない』と、当事者意識を持ってもらいたい」  ―特に市町村のメンテナンス体制は厳しい。  「誰しも人口減少で暮らしやインフラの在り方を改める必要性を頭では分かっていても、体感できていなかったのではないか。地域住民はインフラの利用者であり、維持管理費の負担者であり、ある意味ではオーナーでもある。一方で、『インフラを維持管理は行政の役目』と考える地域住民は多い」  「今あるインフラ全ての維持管理を行政が担うことには限界がある。まず、地域住民が大事だと思うもの、自分が負担してでも残したいものを決めてもらう。地元のインフラの価値を地元で考えて、行政とともに住民が責任を持つ形に転換せざるを得ない。共感の輪を広げられるかがポイントになる」  ―地域インフラの再構築を進める上で、建設業者が果たすべき役割とは。  「建設業者は、行政から対価をもらって工事をするという従来からの建設業像から、『地域インフラのマネジメント業』へと社会の中での位置付けを再認識した方が良い。学校の教員や地域の医師と同じく、地域を支える存在だ」  「インフラのケアと同時に、住民と行政をつなぐ役割を担う、ある意味では地域のリーダーでもある。いい地域を作るためには、インフラを新設するだけでなく、撤退だって一生懸命にやらなければならない場面もある。地域を再構築する主役として、ぜひ活躍してほしい」 (この連載 了)