価格高騰、安値受注の対応 労務費基準の実効性で議論

中央
 国土交通省は、改正建設業法に基づく労務費の基準の実効性確保に向け、工期が長期間にわたる工事での労務費高騰と、安値受注への対応の考え方を示した。3月に非公開で開いた中央建設業審議会のワーキンググループ(WG)で提示し、意見を求めた。特に工期が長期間にわたる工事について、労務費の高騰を事前に予測し得なかった場合も契約当事者間で変更協議が期待されるとし、注文者が自らの地位を不当に利用して変更協議に応じない場合、法違反の恐れがあるとした。  12月までに予定している改正法の施行に当たって、国交省は労務費の基準に基づく取引ルールの運用方針をガイドラインとして示す。WGは、実効性確保策の詳細について、論点を定めて非公開で議論している。  長期にわたる工事を巡っては、工期中に労務費が高騰した場合の対応が論点となった。あらかじめ高騰リスクを受注者が認識していた場合は契約前に発注者に通知する義務を負い、実際に高騰した際に変更協議を行う。  一方、契約時に予期できなかったリスクについても、顕在化した際は契約当事者間での変更協議が期待されるとした。その上で、発注者が取引上の地位を不当に利用して変更協議に応じず、結果的に労務費が基準を下回った際、法違反の恐れがあると整理した。  発注者との関係構築や、閑散期の受注獲得を目的とした安値での受注も論点となった。こうした場合も、材料費・労務費が通常必要とされる原価以上であるべきとし、値引きの原資は受注者の利潤から充てる必要があるとした。  注文者が受注者と価格交渉する際、減額交渉と合わせて生産性向上に向けた提案を行うことは必ずしも否定されない。ただし、歩掛りの改善を対象とした提案でなくてはならず、労務単価そのものを引き下げるような見積もり変更依頼は、労務費基準に違反すると見なされ得る。  WGの委員からは、設計図書の変更・詳細化が必要になる場面も多いとし、契約段階以降も適切に請負金額を変更できるような運用を求める意見が寄せられた。基準に基づく標準労務費のイメージを早期に示し、発注者を交えて議論する必要性を指摘する声もあった。  一方、労務費・賃金の支払い段階での実効性確保を巡っては、さらなる議論を求める意見も多く寄せられた。賃金支払いの確認による実効性確保について、発注者や業界団体の対応には限界があるとの声もあった。