育成就労の転籍要件 転籍先は初期費用補填

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 出入国在留管理庁は、育成就労外国人の転籍者や転籍先の要件を固めた。2027年4月に始まる育成就労制度では、現在の技能実習制度と異なり、外国人本人の意向での転籍を認める。転籍する外国人には入国後1~2年就労する必要があり、転籍先の企業には転籍元が負担した初期費用の一部の補填(ほてん)を求める。  育成就労制度は、技能実習制度に代わる制度で、建設業など人手不足分野の人材確保と育成を目的としている。3年間の就労後、特定技能1号に移行できる。育成就労外国人の転籍や、日本語教育、監理支援機関の許可基準などを盛り込んだ政省令案について意見募集しており、27年4月に新制度での受け入れが始まる見通しだ。  育成就労外国人が転籍を希望した場合、転籍先の企業は、外国人を受け入れた企業が事前準備のために負担した費用の一部を補填しなくてはならない。初期費用は、人材確保のための有形コストと、人材育成費などの無形コストを基に算出する。  有形コストは、職業紹介や入国後講習などにかかった費用(固定標準額)に、来日渡航費やビザ取得費用などの実費を上乗せする。無形コストは固定標準額と同額とみなす。有形コストと無形コストの合計に、転籍者の在籍年数に応じた案分率を乗じて、補填額を算出する。  コストの内訳や固定標準額の具体的な金額は今後、告示で定める。22年度に技能実習生を受け入れた企業の事業報告書によると、固定標準額に相当する費用は約40万円だった。固定標準額を40万円、上乗せ分(渡航費、ビザ取得費など)を20万円とし、就労から1年後に転籍する場合、転籍先が転籍元に補填する負担額は83万円となる=表参照。  育成就労外国人は、受け入れの分野に応じ、就労から1~2年の間は転籍できない。転籍するには、技能検定基礎級などの技能試験とA1~A2相当の日本語試験に合格する必要もある。建設業で働く育成就労外国人の転籍要件は、年内に国土交通省がまとめる分野別運用方針で決める  転籍先は、日本語能力の取得実績や外国人待遇、相談・支援体制状況の評価が高く、外国人育成就労機構(外国人技能実習機構を改組)に「優良受け入れ企業」と認定された企業のみとなる。  受け入れられる転籍者の人数は原則、在籍する育成就労外国人の6分の1とする。受け入れ企業が東京都や大阪府などの大都市圏(指定区域)以外の地方にある場合、受け入れ可能人数は在籍する育成就労外国人の3分の1に拡充し、人手不足が深刻な地方にも配慮する。  パワハラなどやむを得ない事情で転籍する場合、転籍者と転籍先の要件は適用しない。