「新3K」知っていますか(2)「喜ばれる仕事」打ち出そう
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インフラを支える人材に光が当たるようにすることが求められている。
小中学生の子どもを持つ親世代に建通新聞社が行ったアンケート(既報・5月1日付)の結果を見ると、「きつい・汚い・危険」という旧来の3Kイメージが建設業にいまだつきまとっている。この10年間で進んだ処遇改善をどう伝え、将来の担い手である子どもたちに業界への関心を持ってもらうべきか。教育の現場で若い世代と向き合う工業高校の教諭の声を聞いた。
「かなり昔の建設業界のイメージが残っている」。そう指摘するのは、関東圏の高校で建設分野の生徒を指導する教諭だ。建通新聞社のアンケートでは、建設業にネガティブなイメージを持っていた人の多くが、その理由に「仕事がきつい」「長時間労働」などを挙げた。
■高まる需要、細る人材供給
こうした状況に対し、前述の教諭は「今の姿を伝える」ことを重視する。高校を生徒の親が訪問した際も、休暇が取れるようになったことをはじめ待遇の改善を説明すれば理解は得られる。
今、工業高校卒は、業界では引く手あまただ。スーパーゼネコン、大手ハウスメーカーに就職する生徒も出てきており、高校に届く求人票の給与はかつてと比べて5~6万円ほども上がったという。課題は処遇の改善や、仕事の魅力を発信する場がないことだ。「就業者数が減り、一人ひとりの付加価値が上がっている。そこをアピールできれば話しは早い」。
人材の供給源として、工業高校にかける建設業界の期待は大きい。その反面、人口減少による若年者自体の減少や、普通科進学志向の強まりもあって、生徒数は低迷。全国工業高等学校長会のまとめでは、会員校の生徒数は2024年度に22万2563人となり、直近20年間で28・4%減った。定員割れの高校も全国で発生している。
処遇の改善とともに、建設業の仕事内容への関心も育む必要がある。建通新聞社が行ったアンケートで建設業にポジティブなイメージを持っていた人からは、「大きな建造物を精密に造っていくからすごい」「建設業がないと社会全体が成り立たない」「地図に残る仕事」など、処遇改善だけでなく、ものづくりに携わることを評価する意見が多かった。また、これらの回答者からは子どもが建設業界に就職することに対する抵抗感が感じられない。
■職場体験促進へ事業所バンク構築
将来の職業イメージを形成する第一歩は、小中学校のカリキュラムの一環で行われる職場体験だ。ただ、公立中学校で職場体験を実施した割合は、19年度に97・9%だったが、コロナ禍を経て21年度に28・5%にまで低下。23年度になっても76・2%といまだ回復の途上にある。
体験活動に積極的な兵庫県姫路市の担当者は、キャリア教育に関する全国会議で、「高齢化により、地域密着の事業所が受け入れを断念することが増えた」との課題を指摘した。一方、将来の担い手確保に向け、若い世代の職場体験に関心の高い企業も多いといい、同市は、受け入れ先の登録を受け付ける事業所バンクを24年度に立ち上げた。
■インフラの価値を実感
別の工業高校の教諭は、インフラの価値を実感しにくい現状があるとし、建設の仕事が生活に密着したものであることを、小学校から伝える重要性を説く。
若い世代の志向を踏まえ、「学歴が優遇された時代から、人に感謝される、喜ばれる、役立つといった価値観が強く出る時代に変化してほしい。そのような兆候もある」とも分析。縁の下の力持ちのような職業観を脱し、「人に喜ばれ、楽しく尊敬される仕事だというイメージを社会にアピールすべきではないか」と提起した。