遠隔建機に求める安全義務 安衛法への反映を検討
中央
政府の規制改革推進会議は5月8日、デジタル・AI分野の部会で建設機械施工の遠隔化・自動化を取り上げ、労働安全衛生法上の課題についてコベルコ建機、大林組の意見を聞いた。2社は遠隔化・自動化の実現に当たり、法的な安全義務のガイドラインを示すことや、オペレーターに求める免許・技能講習の検討を要望。部会は厚生労働省に対し、安衛関係法令に無人運転の安全義務や技能要件を明記することを求めた。
建機施工の遠隔化・自動化は、国土交通省のi-Construction2・0の柱となる施策の一つ。既に、国交省と安全衛生法を所管する厚生労働省、民間事業者の参画する協議会が社会実装に向けた安全ルールをまとめた。
コベルコ建機は、現行の安衛則で人が建機に直接搭乗することが前提となっているため、労働基準監督署が安全性を判断できなかったり、安全対策が過剰となる課題が発生している点を指摘した。必要な安全義務を事業者が予見できるよう、ガイドライン・Q&Aなどを示すよう要望した。
また、遠隔操作は実機に搭乗する際と異なる習熟、教育が求められる。将来的にはゲームコントローラーのような、より多様な操作システムが開発される可能性もあるとし、遠隔操作に固有の免許・技能講習の要件を検討する必要があるとした。
大林組は、施工者の立場から遠隔化・自動化を実現する上での課題を説明した。新技術に求める安全対策が過剰になると、社会実装のハードルになるとし、適切な安全義務の運用を提言した。
このため、安全義務の在り方を厚労省で検討する際は、先駆的な民間事業者を含めて議論する場を設けるよう求めた。民間事業者として技術的な知見を提供する。
自動建機を用いて施工する際も、求める能力があいまいだとし、施工者に独自判断を求められている現状を指摘。判断を個社に任せるのではなく、遠隔・自動施工に必要な要件に応じた免許、技能講習の在り方を検討する必要があるとした。
厚労省は、遠隔操作と自動運転、無人区画での作業と人・建機の混在区画での施工とで求められる規制の内容が大きく異なるとする見解を示した。その上で、建機の遠隔操作の現状と将来ニーズを収集し、最低限必要な労災防止措置を整理する方針を表明した。
部会の座長を務める中室牧子慶応義塾大学教授は厚労省に対し、25年度上期中に専門家会議を設置し、26年度上期までに検討項目を整理するよう求めた。それ以降、安衛法上での安全義務、技能要件への反映を検討する。具体の措置が示されるまでに労基署に相談が合った場合は、ローカルルールが発生しないよう、厚労省に判断を集約することも注文した。