メンテ阻む技術職員不足 自治体支援の体制構築
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1197自治体の首長によるインフラメンテナンス市区町村会議が5月12日に開かれ、多くの自治体で技術職員不足がインフラ老朽化対策の課題となっている実態が報告された。愛知県豊川市は舗装点検を担う人員不足に対し、国土交通省の支援を得て人工知能(AI)による効率化を実現したことを説明。国交省は持続的に支援できるよう、新技術活用のアドバイスを担う人材バンクを構築する。
インフラメンテナンス市区町村長会議の上部団体である国民会議の冨山和彦会長は「日本全体が労働供給制約の時代に入っている」と述べ、予算不足よりも先に人手不足でインフラの整備・管理体制が破綻する恐れを指摘した。家田仁副会長は行政技術職員の相互ネットワーク構築による「人の群マネ」の実現が必要だとし、自治体の若手技術職員の共助組織「行政エンジニア支援機構」が発足したことを紹介した。
技術職員が5人以下の市区町村は827団体に及び、47・5%と全市区町村の半数近くを占める。技術職員が一人もいない団体も25・1%あり、多くは人口の小さな町村だ。
老朽インフラの増加に対し、メンテナンスの効率化が求められる。しかし、インフラメンテナンス国民会議の調査では、新技術を活用した発注に関する知識のある技術職員の不足が最大の課題とされた。
これに対し、国交省は専門家派遣による自治体支援の体制構築を検討。23年度に全国13市町村を選定し、公募した技術アドバイザーが自治体ごとに課題の精査や新技術選定の助言、効果検証といった支援を行ってきた。
支援を受けた豊川市はインフラメンテナンス市区町村長会議で、舗装の日常点検にAIを取り入れたことを報告。今後は道路維持管理全般に活用する他、包括的民間委託にも取り組むとした。
支援を今後も持続できるよう、国交省はアドバイザーを登録する人材バンクを構築する。学会や都道府県の技術センター、大学・高専などの専門人材を登録するイメージだ。
合わせて、支援体制に関するマニュアルや、自治体からの問い合わせに対応するAIチャットといった支援ツールを整備。これまで国交省が担っていた専門家と自治体とのマッチング機能、土木学会や民間企業との連携を自律的に行える体制を整える。
関係する有識者会議では、人材バンクの事務局機能としてインフラメンテナンス国民会議を推す意見もあった。今冬をめどに今後の方向性を示す報告書をまとめる。