中堅技術者に負担集中 残業申告「実態と乖離」も
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日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)は、傘下団体の組合員に行った2024年度のアンケート結果をまとめた。上限規制の適用により全体としては時間外労働が減ったものの、外勤の技術者では月80時間以上の残業が比較的多かった。実際の時間外労働が長いほど、会社に報告する時間との「乖離(かいり)」が生じる傾向もあった。若手に残業させないため、中堅に負担が集中する構図も見られるという。
アンケートは毎年11月に行っており、今回は時間外労働規制の適用後初の調査となった。
月の平均時間外労働は31・5時間で、前年から4・6時間減少。外勤技術者のうち建築は44・7時間、土木は39・2時間でいずれも7時間以上減少したものの、内勤の技術者や事務、営業と比べると長時間だった。
時間外労働の理由を見ると、内勤は「社内向け書類」が29・6%で最多。外勤技術者は「仕事の性格上、早出・残業する必要がある」が29・8%、「発注者向け書類」が29・7%で並んだ。
実際の時間外労働と会社への報告に「乖離がある」と回答したのは全体の16・3%。時間外労働が多いほど「乖離がある」の割合も大きくなり、時間外労働100時間超の回答者では95・7%と大半を占めた。
前年度調査と比べても、長時間労働の回答者で「乖離がある」との回答割合が拡大。法規制の開始に伴い、三六協定で定めた時間を超過することへの忖度(そんたく)を指摘する声が内勤・外勤を問わず多かった。申告した残業時間が会社・上司により不適切に少なくされたとする回答も3・9%あった。
■若手は賃上げ、30代以上と明暗分かれる
労働時間に関するアンケートに加え、3年に1回行う組合員の生活実態調査の結果もまとめた。家計が「かなり余裕がある」「余裕がある」と回答した割合は39・9%で、1・9ポイント拡大した。年齢別では傾向が分かれ、20代以上では45・2%を占めたのに対し、30代は38・5%、40代は35・5%と相対的に割合が小さかった。
家計が「やや苦しい」「かなり苦しい」と回答した割合も、20代は18・5%と小さかったのに対し、30代・40代はいずれも24%前後と大きかった。
採用競争の激化を背景に若手の賃金水準が上昇したのに対し、結婚したり子どもを持つなど、ライフステージの変化に伴い必要な収入が大きくなる中堅層の賃上げが追いつかず、結果として明暗が分かれた形となった。日建協は、建設産業の魅力を高めるため、ライフステージに応じた賃金水準を検討する必要性を指摘している。