改正下請法、建設業者の取引にも影響
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5月16日に参院本会議で可決・成立した改正下請法・下請振興法は、建設工事の請負契約そのものは対象としないが、建設業者からメーカーへの建材製造委託や設計事務所への設計図書の作成委託といった取引は対象となり得る。価格協議の一方的な拒否や手形払の禁止を規定する改正法の2026年1月1日の施行に備え、適法な取引となるよう改めて精査することが重要になる。
下請法は、親事業者と下請事業者の間での、物品の製造・修理委託や役務の提供などを対象とする。親事業者による優越的な地位の濫用を取り締まるため、資本金に関する要件を定め、規模の大きな親事業者から小さな下請事業者への委託を規制している点が特徴だ。
建設工事の請負契約は建設業法に規定されるため、下請法の対象とはならない。ただし、例えば工事で使う資材の製造を資材メーカーに委託する場合や、設計図書の作成を設計業者に委託する場合には下請法が適用される。
今回の下請法改正の目的は、急激な労務費や原材料費の上昇に対し、事業者間のサプライチェーン全体で価格転嫁できるようにするというもの。このため、下請事業者から申し出があっても価格協議に応じなかったり、一方的に代金を決定したりする行為を禁止する規定を新設する。
建設業にとって影響が大きそうなのが、建材・設備などで利用されることの多い手形払いの禁止だ。昨年11月に下請振興法に基づく指導基準の改正で、決済期間が60日超の手形が指導対象とされたが、法改正によってさらに一歩踏み込んだ規制となった。電子記録債権やファクタリングについても、支払い期日までに手数料を含めた満額の受け取りが困難な場合は認めない。
下請振興法の指導基準改正に合わせ、建設業法令順守ガイドラインでも、60日超の手形は法令違反の恐れがあることが明記された。ただ、建設工事は1件あたりの金額が大きく、請負代金の支払いを受けるまでに長期間を要する特性があり、手形払いの禁止はハードルが高い。国交省は、建設業者の資金繰りの影響を十分見極める必要があるとし、まずは建設業者に対する現金払いの促進、民間発注者に対する前金払いの働き掛けなどを通じて資金繰りの改善を促す。
改正下請法には、「下請」呼称の見直しも盛り込まれた。対等であるべき受発注者の関係を示す用語としてふさわしくないという指摘を踏まえた。「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」となる。
改正下請法の国会審議では、建設業法についても下請という用語の見直しが議論された。建設業界でも、取引の相手方を「協力会社」と呼ぶ慣行は浸透している。国交省は、業界の意見などヒアリングした上で、見直しの必要性を検討する方針だ。