残業規制踏まえ工期設定 公共建築「基本的考え方」改定
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国土交通省は、公共建築工事の発注者が工期を設定するときの「基本的考え方」を7年ぶりに改定する。2024年度から適用された時間外労働の罰則付き上限規制に対応するため、長時間労働の是正、週休2日工事の推進を明記。昨年成立した第3次担い手3法に基づき、資材の入手困難をはじめ工期に影響する事態が起きたときは、受注者からの変更協議の申し出に誠実に応じることを盛り込んだ。
「基本的考え方」は国交省だけでなく、営繕工事を発注する国の機関、地方自治体でも活用する。都道府県、政令市の営繕工事担当者が集まる全国営繕主管課長会議総会で、5月26日に改定案をまとめた。国の省庁の営繕担当者による連絡会議を経て、7月に決定・公表する。
前回の改定は18年。時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用され、建設業の労働環境が大きく変わったことを踏まえ、内容を見直すことにした。資機材調達の遅れや設備工事への工期のしわ寄せ、猛暑日の増加といった近年の課題への対応も盛り込んだ。
「基本的考え方」の基本方針には、長時間労働の是正、週休2日の確保を考慮するよう明記。施工対象となる施設の利用者(入居官署)をはじめ、関係者との調整により週休2日の確保に取り組むとした。
設計段階では、敷地や施設の現況を把握するとともに、入居官署に施工計画を説明し、騒音・振動を伴う作業を実施できない日についても、協議・確認するよう追記する。こうした事前調整を十分に行うよう求める工事受注者の声を踏まえた。
設計図書と敷地の現況のずれや誤りについても、工期遅延の要因となるため図面審査を徹底する。
工事発注の準備段階では、工事内容や施工条件に加え、行政手続き期間も適切に工期に反映することとした。技術者の現場専任期間にも配慮しながら、必要に応じて着工前に余裕期間を設け、資機材や労働者を確保できるようにする。地域の他工事の量を踏まえ、施工時期の平準化にも努めることとした。
施工段階では、後工程に当たる設備工事に工期のしわ寄せがいかないよう、受電時期や、設備を実際に稼働させる総合試運転調整の期間を考慮する。
また、改正建設業法に基づくICT指針を踏まえ、情報共有システムを活用した受発注者間の書類提出の円滑化に取り組むことを記載。さらに、請負契約の締結後に工期に影響を及ぼすような事象が発生した後、工期の変更について協議の申し出が受注者からあった場合、誠実に応じることを盛り込んだ。
24年に中央建設業審議会が勧告した、新たな工期に関する基準にも対応し、工期設定時に考慮すべき事項として「猛暑」を追加。国交省の工事で先行して取り組んでいる「月単位」の週休2日工事も考慮する。