賃金支払いの実効性確保 業界挙げ「踏み込んだ対応」
中央
国土交通省は6月3日、改正建設業法に基づく労務費・賃金支払いに関する中央建設業審議会のワーキンググループ(WG)を開き=写真=、「これまでの施策の延長にとどまらない踏み込んだ対応」に業界を挙げて取り組むよう呼び掛けた。標準請負契約約款に適正な賃金支払いを表明するコミットメント条項を記載することをはじめ、既に議論の進んだ施策について合意を求めた。
12月までに全面施行する改正建設業法では、技能者の労務費に基準を定め、著しく下回るような見積もりを禁止する。労務費を内訳明示する慣行を確立し、重層下請け構造の中でも目減りすることなく、技能者に適正賃金が支払われるようにする。
受発注者、元請け・下請けといった立場の違いから、これまでのWGでは実効性確保策を巡って意見が分かれる場面もあった。3日のWGで国交省の平田研不動産・建設経済局長は、これまでの議論を踏まえた修正案を示し、「一致点を確認できれば」と述べた。
国交省が「一定の合意」を求めた施策を見ると、12月に予定している労務費の基準の施行に合わせ、適正な労務費・賃金支払いを契約当事者間で表明するコミットメント条項について、公共・民間の標準請負契約約款に追加するとした。ただし、コミットメントは必須ではなく選択的な条項とし、ハードルを下げた。
技能者への賃金支払いの確認に当たっては、賃金台帳そのものではなく適正支払いの誓約書を提出してもらう。下請けへの労務費支払いの確認には、下請けとの契約の写しを提出することとした。
賃金支払いの実態を効率的に把握するため、デジタル技術を活用した技能者からの情報提供システムの構築にも合意を求めた。最低賃金未満のような明白な法令違反でなくとも、処遇に不満のある技能者に給与や労働時間、経験を入力してもらい、必要に応じて国交省から雇い主への指示・助言のきっかけとする。26年度に国がシステムを設計し、27年度に運用体制を固めて試行する。
労務費・賃金の支払いに関する国交省の調査で悪質性が認められた事業者を公表する制度を構築する方針も示した。事業者名の公表に関する基準を25年度中に整理し、26年度以降に開始する。
一方、委員の意見に隔たりのある施策については、27年度中に一定の結論を得るとした。このうち「処遇優良事業者証の活用」は、希望する建設業者が自社で雇用する技能者への賃金支払い状況を入力し、一定水準を上回っていた場合に証書を受け取るシステムとする。今後、直轄工事で試行実施する。
技能者からの通報の受け付けや、優良事業者証の発行に必要なシステムの運営は、国・都道府県だけでなく、中立的な第三者機関が連携して担うよう求める意見もあった。こうした関係者間の役割分担についてもさらなる議論が必要になるとした。