国土強靱化実施中期計画案 20.3兆円からの積上げ焦点

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 政府は、第1次国土強靭化実施中期計画(案)に盛り込む「今後5年間でおおむね20兆円強」の事業規模について、施策の柱ごとの内訳を示した=表。合計するとおおむね20・3兆円となる。この内訳を最低限の事業規模とし、資材価格や人件費高騰の影響を毎年度の予算編成過程で反映。新たな災害対策や社会課題への対応を含め、どこまで事業費を積み上げることができるかが焦点となる。6月4日に開かれた国土強靱化推進会議で提示した。計画は近く閣議決定する。  実施中期計画案の提示に当たって、坂井学国土強靱化担当相は「5か年加速化対策に続く計画として、国土強靱化の取り組みを切れ目なく一層強化していく必要がある」と述べた=写真。  第1次実施中期計画の対象は2026年度から5年間。柱となる施策として、「防災インフラの整備・管理」におおむね5・8兆円、「ライフラインの強靱化」に10・6兆円、「デジタル等新技術の活用」に0・3兆円、「官民連携強化」に1・8兆円、「地域防災力の強化」に1・8兆円の事業規模を見込んだ。これらを合算すると、合計20・3兆円となる。  現行の5か年加速化対策は5年目までで事業規模約14・3兆円となり、うち国費に約7・4兆円を充てることとなった。26年度から始まる第1次実施中期計画でも、財政措置に加えて財政投融資、民間事業者による事業を加えて事業規模20・3兆円を確保する。初年度分の予算については、「速やかに必要な措置を講じる」ことが明記された。  計画期間内に実施すべき施策326施策を提示するとともに、特に推進の必要な114施策について、進ちょく管理の指標を設定。毎年度フォローアップし、資材価格や人件費などの状況を踏まえて適切に反映するとした。  与党・自民党の佐藤信秋国土強靱化推進本部長は、「おおむね20兆円強」としていた事業規模について、事業の進ちょくや社会的要請を踏まえて積み増しを政府に継続して働き掛け続ける必要性を指摘していた。  4月にまとめた計画案に、埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえた国土交通省の有識者会議の意見を踏まえ、上下水道施設の戦略的な維持管理・更新を施策として追加。全国に約600㌔ある大口径水道管の更新完了率を、現行の8%から5年間で32%にまで引き上げることなどを盛り込んだ。  また、パブリックコメントの結果を受け、CO2排出量の削減に資する材料や燃料、建機の開発動向を見据えた活用推進も追記した。  会議の座長を務める小林潔司京都大学名誉教授は、上下水道やガスの管路をはじめとした地下インフラの適正管理などを念頭に、官民連携の体制強化の必要性を指摘した。従来のPFIとは異なる広域・分野間連携を推進するため、「複数の官、民を束ねる組織の権限、財源に関する制度設計」を求めた。  福和伸夫名古屋大学名誉教授は、建築物の耐震化率に大きな地域差がある現状に触れ、取り組みを精査する必要があるとした。