重層下請の調査開始 しわ寄せ・非効率を把握
中央
国土交通省は、建設現場の重層下請け構造に関する実態調査を開始した。現場ごとに、元請けや下請け、一人親方のそれぞれの立場から工事概要や下請けの次数、重層下請け構造による課題を把握。構造的な要因で工事の非効率や末端の技能者へのしわ寄せが生じていないか調べる。
6月23日付けで元請け、専門工事の主要な建設業団体や、多数の一人親方の加盟組合を傘下とする全国建設労働組合総連合に調査への協力依頼を行った。まずは元請け、下請けなど幅広い立場、職種に対し、7月31日までアンケートを行う。その上で、承諾を得た企業・一人親方に対してヒアリングを実施し、より詳しく実態を深掘りする。調査結果は2025年度末までにまとめる。
アンケートの主な質問項目は、回答者の所属企業の概要や、携わっている建設現場での立場、工事の規模、発注者など。工事の次数や、下請けに出す理由などから重層下請け構造の発生要因・実態を把握するとともに、重層下請け構造に起因する課題についても聞く。土木・建築など工事の種類に応じた勤務実態、下請けの次数に応じた役割分担などを把握する。賃金や労働時間など、技能者の労働環境への影響についても調べる。
多種多様な専門工種の組み合わせで成立している建設工事は、重層下請け構造と密接に関わっており、この構造には一定の合理性があるとされる。その一方で、過度な重層下請け構造が技能者の処遇や、品質・安全性の低下につながるとの指摘は根強い。
中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会は23年にまとめた議論で、こうした不利益が発生していないかさらなる検討を求めていた。委員会は、実態を踏まえた上で建設業許可の合理化についても検討事項に位置付けていた。
国交省は、改正建設業法に基づく労務費の基準の作成・勧告や、標準労務費を著しく下回る見積もり・見積もり依頼の禁止により、利益・経費のいわゆる「中抜き」が抑制され、過度な重層下請け構造の是正に一定の効果があると見る。自治体の発注工事や、大手ゼネコンが受注するような民間工事では、下請け次数に制限をかける例もみられるようになった。
国交省は、今回の調査で建設業の業界構造を改めて調べ、業界の構造が工事費用・工期や技能者への影響の有無を確認する。人口減少による将来の担い手不足が深刻化する中、持続可能な建設業の請負契約の検討に生かす。アンケート・ヒアリングによる調査結果は、6月26日からスタートする「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」での議論でも参考とする。