建退共の複数掛金導入 掛金日額、柔軟に選択可能
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勤労者退職金共済機構の建退共事業本部が設置した検討会議は、建退共への複数掛金制度導入についての中間報告をまとめた。複数掛金制度の導入は電子ポイント方式の利用が原則で、事業主が掛金日額を柔軟に選択できるようにする。建設キャリアアップシステム(CCUS)との連携によって、技能レベルに応じて自動的に掛金日額を設定することも可能にする。掛金日額を上乗せすることで、技能者の退職金を最低でも1000万円まで引き上げる。
現行の建退共の掛金日額は320円で、掛金を37年間納付しても退職金は400万円に満たない。こうした実態を踏まえ、厚生労働省の労働政策審議会の部会は今年3月、掛金日額を上乗せできる複数掛金制度を導入し、技能者の処遇改善を図るよう提言。この提言を受け、建退共事業本部は業界関係者を集めた検討会議を4月に発足させた。
検討会議がまとめた中間報告によると、複数掛金制度の導入によって事務負担が重くならないよう、電子ポイント方式での利用を原則化。元請け・事業主が、現行320円で単一の掛金日額を10円単位で上乗せできる柔軟な制度設計とする。
さらに、より簡便に複数掛金制度を導入できるよう、CCUSに蓄積された就業履歴データとの連携により、技能レベルに応じた掛金日額の自動設定も可能にする。
建退共事業本部の試算によると、複数掛金を導入し、日額700円を45年間納付した技能者の退職金は1021万円、日額1000円を納付した場合の退職金は1434万円になるという。
中間報告では、民間工事への建退共の普及策も盛り込んだ。国土交通省が検討している労務費の基準には、発注者が支払う必要経費として、法定福利費、安全衛生経費と並び、建退共の掛金が盛り込まれる見通し。建退共掛金を内訳として記載した見積書の提出を促進し、民間工事での建退共の普及を拡大する。
複数掛金制度の導入には、建退共を単一の掛金日額、日額上限を800円と定めている中小企業退職金共済法の改正が必要になる。検討会議は、9月に開く次回の会合で最終報告をまとめる。
■10月から電子申請にポイント還元
建退共事業本部は、複数掛金導入の前提となる電子ポイント方式の利用者を拡大するため、同方式の利用者に対するポイント還元を実施する。10月1日から26年3月末までに電子ポイント方式を利用した共済契約者に対し、購入した退職金ポイントの2%をポイント還元する。
同じ10月1日にスタートするCCUSとの完全連携を見据え、CCUSとのデータ連携を行う現場はポイント還元率を5%に引き上げる。公共工事、民間工事のいずれも対象。期間中の購入額に対し、還元額の上限は1社当たり200万円とする。