標準約款改正の方向性 金額変更方法を明記
中央
国土交通省は、建設工事標準請負契約約款を改正し、資材価格高騰に伴う請負代金額の変更方法を明記する。改正建設業法で、請負代金の変更方法が契約書に記載すべき事項として明確化されたことを受けた対応。6月30日に開いた中央建設業審議会の総会で、改正の方向性を報告した。
近年の資機材価格の高騰を受けて、業界から請負代金額の変更方法を、契約書のひな形である標準約款に記載するよう要望があった。30日の中建審では、「変更方法」として契約書に記載が求められる具体的な条項について、「最低限盛り込むべき内容」を約款に規定するとの方向性を提示した。
資材価格に著しい変動が生じたときに受注者が請負代金額の変更を請求できると明記。変更額は当事者間の協議で定めるとし、価格変動に加え、それまでの交渉経緯なども含めて「その他の事情等」を考慮するとのイメージを示した。
改正建設業法は、請負代金額に影響し得るリスク情報を契約前に通知する義務を建設業者に対して規定した。リスクの顕在化後は、注文者に対して代金変更協議に誠実に応じる努力義務が課される。こうした法制度と合わせ、適正な価格転嫁を促していく。
中建審の委員として参加した日本建設業連合会の宮本洋一会長は、標準約款への変更協議条項の記載について「当事者双方が何をすべきか明確にしてほしい」と述べ、変更額の根拠情報などについて積極的に提案する考えを示した。
全国建設業協会の今井雅則会長は、変更の必要が生じたとき、速やかに決めなければ「工事が進められなくなる」と発言。事後的に契約面で対応できるような仕組みも有効だとした。
全国中小建設業協会の土志田領司前会長は公共工事が主体の地域建設業の立場から、「国と異なり、自治体は設計変更に対応しない」実態があると指摘。当初契約の3割以上の増額を認めない運用も根強いとし、制度的な手当てを求めた。
建設業者に対し、直接雇用している技能者には適正な賃金、下請けには適正な労務費の支払いを表明するよう求める「コミットメント条項」についても標準約款に記載する。賃金・労務費の開示に関する規定を設け、末端の技能者に適正な賃金が支払われるよう担保する。ただし、契約当事者が任意で利用できる選択条項とする。
この他、直轄工事で前払金を現場管理費・一般管理費等に充てる「使途拡大」が25年度から恒久化されたことを受けて、公共約款で前払金について規定している条項も見直す。既に公共約款で規定されている暴力団排除の条項を、民間・下請けに拡大するとの方向性も示した。民間事業者間の契約でも暴力団排除の条項が一般化したことを受け、対応する。
改正建設業法の国会審議で、請負代金額の変更協議を円滑化するための約款改正が求められたことを踏まえ、受発注者間のパートナーシップ構築に向けた規定についても検討する。
今回の議論を受け、11月に開く次回中建審で標準約款の改正を審議する。