労務費確保・就業履歴蓄積 宣言企業に経審加点
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国土交通省は、経営事項審査に「技能者を大切にする企業」の自主宣言制度に基づく新たな加点措置を設ける。労務費の確保・行き渡りに向けた取り組みや建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した就業履歴の蓄積といった措置を宣言している企業に対し、W点(その他審査項目・社会性等)で加点する。自主宣言制度を開始する2026年12月以降の改正を予定している。
自主宣言制度は、改正建設業法に基づき労務費を技能者に行き渡らせる取引慣行を根付かせるための仕組み。発注者、元請け、下請けに分けて取り組みを整理し、実施を宣言した企業をポータルサイトで公表する。技能者の処遇改善に前向きな企業を可視化し、企業間の取引で評価される環境をつくる。経審での加点は、公共工事を元請けで受注する建設企業に対するインセンティブとなる。
経審の審査項目のうち、W点に自主宣言企業に対する評価項目を設ける。加点を受けるには、▽労務費の確保・行き渡りのための取り組み▽CCUSを活用した就業履歴の蓄積▽宣言企業との取引優先―を宣言しなくてはならない。審査基準日以前に宣言し、宣言制度のポータルサイトに掲載されている場合に5点を加点する。
これに伴い、既存の「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」に対する加点幅を5点引き下げ、民間工事を含む全ての工事で実施した場合に10点、全ての公共工事で実施した場合に5点を加点するよう見直す。
同じくW点では、建設機械の保有状況に対する評価項目も改正する。能登半島地震の応急復旧工事で使用された建機の中に、加点対象となっていなかったものもあったことを踏まえ、見直しを検討する。今後、アンケートを実施し、災害時の活用実績を確認できた建機や、能登半島地震の応急復旧活動で活用実績のある建機を加点対象として追加する方針だ。
能登半島地震は、冬期に半島の地形での被災となったため、復旧段階でも大雨による複合災害が発生した。こうした地震で活用された建機を加点対象とすることで、多様な形態の災害に対応できるようにする。
現行で加点評価の対象となっている建機は▽ショベル系掘削機▽ブルドーザー▽トラクターショベル▽締め固め用機械▽解体用機械▽高所作業車▽モーターグレーダー▽移動式クレーン(つり上げ荷重3㌧以上)▽ダンプ―の9種類。
さらに、これまでW点の加点対象となっていた社会保険への加入状況を、審査項目から除外する。建設業許可に社保加入が必須となってから10月1日で5年が経ち、加入の確認が一巡したことを受け、審査対象から外すことにした。改正時期については、申請事務の混乱を避けるため、他の改正検討項目の状況を踏まえて判断する。