全建会員6割がICT施工 人材育成、コストに負担感も

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 全国建設業協会(全建、今井雅則会長)の会員企業1958社が回答したアンケート調査によると、ICT施工に取り組んでいる企業は回答した企業の57・0%に当たる1117社だった。ICT施工として発注されていない工事でも、自主的にICT施工に取り組んでいる企業も前年度より増加した=グラフ参照。2016年度に始まったICT施工の裾野が広がった一方、社内で体制構築や機材購入に負担を感じている企業は多く、初期費用を抑える助成制度に期待する声も強い。  このアンケートは、全建の会員企業の生産性向上への取り組みを把握し、政府・与党への要望に活用するために実施したもの。4~5月に都道府県建設業協会の会員企業1958社が回答した。  ICT施工が16年4月に国交省直轄工事でスタートし、来年4月で10年がたつ。アンケート調査の結果によると、ICT施工に取り組んでいると回答した企業のうち、発注者指定型や施工者希望型の工事の受注実績のある企業は82・4%。残る17・6%の企業はICT施工として発注していない工事でも、現場でICT施工に取り組んでいると回答した。  都道府県発注の工種別で見ると、受注実績が最も多かったのは土工の87・2%で、舗装工の19・8%、法面工が16・0%、構造物工が10・2%と続いた。  ICT建機の調達を「レンタル・リース」と回答した企業は54・1%、「自社所有機械」と回答した企業は38・9%だった。レンタル・リースを選択している企業は、建機が高額であることや、対象工事が少ないこと、コストパフォーマンスが悪いことを理由に挙げる企業が多い。ICT施工に取り組んでいない企業にその理由を聞いても、「コストに見合った利益が回収できるか疑問」といった声が強い。  自由回答を見ても、コストや人材育成を課題に挙げる企業は多い。ある回答者は「ICT活用は内製化できてこそ本来の目的を達成できる」とした上で、継続的なICT活用の機会確保、都道府県・市区町村工事での発注者側のサポートなどを求めた。人材育成や機材購入のコスト負担に対し、「手厚い助成制度を期待する」との声も聞かれた。  工期短縮や施工管理の効率化といった効果を認めつつも、「データ入力する技術者やソフト、機器、機械に経費が掛かりすぎる」「発注前に現地の確認や設計図書の精査を確実に行ってほしい」との意見も出ている。 ■施工管理アプリの活用は6割  ICT施工だけでなく、生産性向上のために取り組んだことを聞くと(複数回答)、「施工管理アプリの活用」と回答した企業が63・3%を占め、前年度の調査に続いて最も多かった。次いで「電子黒板の活用」が60・2%と多く、「ICT施工」の50・2%を上回った。都道府県・市町村の発注工事で普及が広がっている電子契約を活用している企業も44・4%となり、前年度を6・0ポイント上回った。