安衛経費明示の標準見積書 公共は2割で提出
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国土交通省の2024年末の調査によると、公共工事で安全衛生経費を内訳明示した見積書を提出した下請け企業は、次数を問わず約2割となったことが分かった。民間工事では、次数が大きいほど提出した下請け企業の割合が減少する傾向が見られた。12月に全面施行する改正建設業法では、内訳明示すべき必要経費に安衛経費も含める方向で検討しており、国交省は適切な見積もり慣行の定着を働き掛けていく。
国交省は、安衛経費を内訳明示した標準見積書の作成手順を24年3月に作成し、専門工事業団体に活用を依頼した。回答のあった82団体のうち、24年12月までに8団体が「作成済み」、22団体が「作成中」となった。「検討中」と合わせて72・0%が作成に前向きに取り組んでいる状況だ。
一方、建設業許可業者のうち標準見積書を「知っている」と回答したのは34・0%にとどまった。
直近の現場で内訳明示した見積書を「提出した」と回答した下請け事業者は、公共工事の1次で24・3%、2次で20・3%、3次以降で22・0%となった。
一方、民間工事で「提出した」との回答は1次で19・4%、2次で16・9%、3次で12・1%となり、次数が大きいほど提出割合が減少する傾向となった。
改正法では建設業者に対し、適正施工の「必要経費」を内訳明示した見積書を作成する努力義務を課す。「必要経費」には安衛経費や法定福利費、建設業退職金共済制度の掛金を位置付ける方向で、適正な見積もり慣行の定着は急務だ。
実際に安衛経費を内訳明示した見積書を提出した現場では、公共・民間工事ともに安衛経費を「100%以上受け取れた」との回答が7~8割を占め、一定の効果を確認できている。
100%以上受け取れた事業者は公共工事の1次の82・9%、2次の78・4%、3次以降の72・7%だった。民間工事では1次の79・2%、2次の74・4%、3次以降の71・4%となった。公共・民間を問わず、次数が大きくなるほど安衛経費を100%以上受け取れた事業者の割合が減少する傾向が見られた。
国交省は、リーフレットやホームページでの情報発信、都道府県担当者・建設業者を対象とした説明会開催により安衛経費そのものの認知度の向上、必要性の周知に取り組む。
安衛対策の実効性確保では、元請け・下請け間で対策の実施分担や、費用負担の認識をすり合わせる「確認表」の活用も23年度から推進している。専門工事業団体のうち「作成済み」は31団体、「作成中」は8団体、「検討中」は24団体となっている。
確認表を「知っている」と回答した割合は標準見積書とほぼ同じで33・4%。安衛対策の実施者や経費負担者を「明確にしていない」と回答した割合は公共の1次でも45・7%を占め、3次以下では公共・民間工事のいずれも60%を超える結果となった。