日建連が長期ビジョン2.0 10年後に技能者129万人不足 生産性向上、入職者増で解消

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 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は、建設業が2050年にあるべき姿を示した「建設業の長期ビジョン2・0」を策定した。50年の建設業を未来予想図=図参照=として示す一方、10年後の35年の建設投資額と技能者数を推計し、129万人分の労働力が不足すると予測。労働力の不足解消に向け、生産性の25%向上、技能者の所得倍増、外国人材の積極的獲得などの具体策を提言した。  10年前に策定した長期ビジョン以降も技能者の減少に歯止めはかからず、処遇改善も道半ばにあるとして、新たなビジョンをまとめた。  副題を「スマートなけんせつのチカラで未来を切り拓く」とし、50年にはデジタル技術のさらなる進化が、建設業従事者の役割・作業環境・労働条件、生産体制を抜本的に変革すると予測。ロボット・AI・人間の役割分担が進み、技能者の労働内容はより高度なものになり、技術者と技能者のマルチタスク化も進展。マネジメント業務や複数機械の遠隔操作なども実現するとした。  さらに、ロボットによる完全自動施工により、24時間365日、天候に左右されない作業が実現し、生産性も飛躍的に向上するとしている。  2050年に日本経済を担う若年・中堅層に建設業の未来の姿を募集し、集まった1543件の応募をAIで統合。「建設業の未来予想図」としてビジョンに組み込んだ。  ビジョンでは、2050年への進化の道筋を歩むためには、今後10年が大きな意味を持つと強調。35年の建設投資と担い手の推計を前提とし、人手不足の解消に向けた具体策も提言した。  建設投資額(名目値)は、現在の68・5兆円を23・1%上回る84・3兆円になると推計。その一方で、25年に299万人いる技能者に直近10年間の減少率(平均1・26%減)を当てはめ、35年に264万人まで減少すると予測した。投資額が増加する反面、技能者数が減少するため、労働力に最大129万人分の不足が生じるとみている。  労働力不足に対する具体策の柱は、生産性向上と入職者の増加。生産性を25年比で25%向上させる目標を設け、施工のオートメーション化・スマート化にさらに力を入れる。プレキャスト、3Dプリンター、遠隔技術、自動運転技術、自律型重機などの新しい技術を現場に実装する。  若者や外国人から選ばれる産業となるため、新4K(給与、休暇、希望、かっこいい)を実現する。年平均7%以上の持続的な賃上げにより、技能者の所得倍増を目指し、40歳代の技能者の平均年収1000万円超を実現するとした。改正建設業法の労務費に関する基準や建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能レベルの評価に応じた賃金の支払いを促進。公共工事設計労務単価の在り方の見直しも国土交通省に働き掛ける。  建設業退職金共済の掛金を引き上げ、まずは退職金1000万円、その後は2000万円とする目標も設けた。  現在の土日一斉閉所運動は、祝日、夏季、年末年始休暇を追加する形へと進化させる。公共機関が発注する全ての工事での実現も働き掛ける。裁量労働制、変形労働時間制、フレックスタイム制など柔軟な働き方を推進し、猛暑日の屋外作業禁止の法制化も働き掛ける。  外国人材が建設業の主要な担い手となるよう、外国人材のニーズに応じた多様なキャリアパスを構築する。業界を挙げて「同一労働同一賃金の原則」を徹底するとともに、戦略的に外国人材の送り出し国のターゲットを決めた上で、来日前に日本語教育や技能習得を支援できるようにする。