猛暑に直面する建設業界 課題解決へJCLPの役割増す

中央

今井雅則共同代表

 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、持続可能な脱炭素社会の実現を目指して意見交換や要望活動などを行う企業グループだ。大手を中心に230社ほどが所属し、建設関連の企業も多数加盟している。今井雅則共同代表は、戸田建設の会長としても気候変動問題に正面から向き合っている。同団体での活動を対策の推進にどう生かすのか。建設業界が気候変動対策に取り組むべき背景や同社の試みについて聞いた。  建設業界は、気候変動に起因する夏場の異常な暑さに直面している。熱中症による死亡者が出るなど、危険な状態にさらされながらも、経済の停滞や、工期の延長でコストがかさむことなどを避けるため、命懸けで作業を続けているのが実情だ。「こうした屋外作業の過酷さは、離職者を増やし、若者からの不人気を加速させる要因にもなっている」と今井氏は指摘する。  厚生労働省は建設業界に対して、WBGT値(暑さ指数)を基に休憩時間の目安を示しているが、これを守ると、7月と8月の実労働時間は半分程度になってしまう。  猛暑をはじめとする異常気象の主な原因は、人間活動が招いた地球温暖化とされている。裏を返すと、人間の意識的な行動変容が解決策になり得る。  地球温暖化を引き起こす二酸化炭素の排出量削減に、建設業界はどう向き合えば良いのか。今井氏はその一例をこう話す。「建設現場で排出するCO2の大部分は、重機とダンプの稼働によるものが占める。例えば、ダンプに使用する化石燃料に添加剤を加える、バイオ燃料に置き換える、電動ダンプを導入するといった策が考えられる」。  また、CO2を大幅に削減するには、建物の引き渡し後にも目を向ける必要がある。戸田建設グループの2023年度実績によれば、CO2排出源の約95%は原材料の調達時や商品の納入後を指す「スコープ3」で、しかも約74%が建物使用時に排出されている。つまり消費電力をグリーンエネルギーで賄うことができる建築物であれば大規模な削減が可能だ。  「環境に優しい建機を走らせる、エコに発電する建物を造るには、業界の垣根を越えた連携が必須」。つまり異業種間で情報交換し、団結して政府や国土交通省などへ提言しながら、その実効性を高めるために、JCLPの果たす役割と重要性が増している。  今井氏と共に活動に参加する戸田建設の矢吹慎悟氏は、「他産業の事例も役立つ。ある製薬会社が全営業車を電気自動車に替えた話は、建機の脱炭素化に向けて勉強になった」と語る。  一方で戸田建設も他企業へ刺激を与える存在だ。JCLPの松尾雄介事務局長は「日本で再生可能エネルギーの普及は難しいと考える人も多かった2016年、同社の浮体式洋上風力発電の構想を聞き、所属企業の認識が一変した」と話す。再エネ意識の高い外資系IT企業なども注目しているという。  この取り組みは既に実現の段階へ移行している。26年1月には長崎県五島市沖で、国内初の浮体式洋上風力発電ファームが本格稼働し、商用利用が始まる。同社開発のハイブリッドスパー型洋上風力発電機は、特長であるコンクリート製の浮体下部の製造に地元建設業者が参加することで、地方経済の発展にもつなげている。「大規模発電所を各地に展開すれば、より多くの地方建設企業が参加できる。地域活性化と併せて取り組むことで気候変動対策を加速させたい」と今井氏は意気込む。  (人材開発・SDGs推進室=世取山恵)