繁閑に左右されない価格に 労務費確保へ危機感共有
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建設産業専門団体連合会(建専連)と国土交通省は7月30日、改正建設業法に基づく「労務費の基準」を活用した技能者の処遇改善について意見交換を行った=写真。建専連の岩田正吾会長は、担い手確保には「繁閑差に左右されない請負価格の設定が必要不可欠だ」とし、商慣行の転換に取り組む考えを示した。国交省の楠田幹人不動産・建設経済局長は、改正法の12月施行を見据えて「業界内での浸透、定着が重要になる」とし、建専連に協力を求めた。
意見交換では、建専連の佐藤隆彦副会長(全国コンクリート圧送事業団体連合会会長)が公共工事を念頭に、競争入札での安値受注により「労務費の基準が現場で形骸化する恐れもある」と指摘した。
価格競争からの脱却に向けた周知・啓発を求める佐藤氏に対し、国交省の山影一茂建設業政策調整官は基準に関する説明会の開催や、見積書の作成手順・ひな形の提示をを通じ、制度への理解を広げる考えを述べた。
建設Gメンによる監督・指導の要望に対しては、鴫直俊建設業適正取引推進指導室長が、「公共・民間を問わず適切な取引が進むよう取り組む」と応じた。
岩田会長は労務費に加え、安全衛生経費や建退共の掛金をはじめ「適正な経費」の重要性を強調。建専連内で経費の項目を整理し、標準見積書の整備を進めているとし、活用促進へGメンの協力を求めた。経費確保へ「団体間の交渉」も有効だとし、労務費や必要経費を価格競争から除外する必要があるとした。
労務費の基準の周知を巡っては、国交省の伊勢尚史参事官(建設人材・資材)が物価資料への掲載も視野に、取り扱いを検討していることを説明した。
働き方改革もテーマとなった。建専連の伊藤銀平副会長(全国建設室内工事業協会会長)は、担い手確保には週休2日の実現が欠かせないとし、特に民間工事に対して適正工期の周知を求めた。
公共工事の先進事例として、国交省の関健太郎建設システム管理企画室長は、宇都宮国道事務所で猛暑期間の7~8月に現場作業を休工とする工事を試行していることを紹介。効果を確認し、全国展開する考えを述べた。
建専連の山梨敏幸理事(日本機械土工協会会長)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)のカードリーダー設置が特に地方部で遅れているとし、公共・民間を問わず全工事現場での設置義務化を要望した。
国交省の小川洋輔CCUS推進官は、「幅広い主体と一体になって取り組む」とし、安価なカードリーダーの普及促進や無償貸与といった支援を通じて活用を促す考えを述べた。
建専連の柴﨑祐一氏(全国クレーン建設業協会会長)は、移動式クレーンの実勢取引価格が高騰している実態に触れ、物価資料に記載されている機械損料が低い水準にあるとした。
伊勢参事官は、高騰する価格を取引の現場で転嫁できるよう、協議を促していく考えを述べた。