Z世代の就職観Ⅱ⑲ 荒川工科高校

東京

インタビューに応える荒川工科高校の武田先生

 荒川工業高等学校は、1963年に前身の上野高等学校から改称した。発電や送電など強電分野を取り扱う電気科や電子回路など弱電分野を取り扱う電子科で構成し、長年にわたり多くの電気工事士を輩出してきた。現在は情報技術科を加え、荒川工科高等学校に校名を変更して運営している。進路指導を担当する武田鎮一先生に、学校の特徴や就職事情について話を聞いた。  ―学校や生徒の特徴は。  「開校当時から電気工事士の人材育成に注力しており、都で唯一の電気専門の高校として知られている。発電や送電などの強電分野を学ぶ電気科、電子回路や半導体などの弱電分野を学ぶ電子科、プログラミングなどを学ぶ情報技術科の3学科に分かれる。本校の特徴は、企業や専門学校と連携して、生徒の学習効果向上に向けたTokyo p―TECHを実施している。生徒は情報技術やキャリア教育などを学ぶ」  「電気業界の人気低迷や普通科を希望する生徒の増加などが要因で、7年ほど前から定員割れが続いている。1学年の定員140人に対して、80人前後が所属。元々、電気を学びたくて入学したというより、勉強が苦手だから入学したという生徒が多い。電気科生徒のほとんどは第2種電気工事士を取得して卒業する」  ―外国人の生徒が増えていると聞く。  「クラスの1割以上が国外にツールを持つ生徒で、年々増加している。特に中国やフィリピン、ネパール系の生徒が多い。15~18歳までに来日して入学すると高校生の扱いになるため、同じ高校1年生でも年齢差があることも。日本語の習得状況に差があり、一定の読み書きができるよう放課後に日本語教育を進めている。生徒が就職で内定をもらうと、生徒に自国の大使館でビザを切り替えるよう指導する」  ―就職事情について。  「生徒の6~7割が就職を選択する。特に電気科の9割は就職を希望し、電気工事会社に進む。企業からの求人票は年々増加傾向にある。2024年度には3650件で、一昨年度から1000件近く増加した。本年度は8月の段階で求人数は4000件以上となり、既に昨年度の求人数を超えた。高校2年生の11月にインターンシップ、12~3月に企業40社ほどを集めた就職ガイダンスを実施。インターンを受け入れる企業は、毎年増加している」  ―どういった企業が人気なのか。  「ビル管理やエレベーター、鉄道関係の会社は人気が高い。自転車通学の生徒が多く、家から近い企業を選ぶ傾向もある。自社で研修センター所有している企業や、業務時間内に資格取得の勉強ができる企業は特に人気がある。担当教員は大企業または大企業の子会社を勧める傾向がある。休日数は年間120日以上、給与は初任給20万以上が指標になる。今年から就活支援サイトのHandyを本校でも取り入れた。給与や休日数など求人要件を限定して検索できるため、今後はより一層数字で企業が選ばれるだろう」  ―中小建設会社が人材を確保するには。  「かなり厳しいというのが本音。生徒に中小企業のことを知ってもらうしかないが、インターン先として選ばれる企業も限られてきている。学校の空きスペースを利用して、建物の模型を展示するだけでも興味を持つ生徒はいるだろう。会社を知ってもらうきっかけを作ることが重要だと感じる」 (多摩支局=八坂篤頼)