樹上作業時の墜落・転落防止へ 「造園ワークポジショニング作業」 日造協 造園連

中部

樹上で安定した作業姿勢を確保

 日本造園建設業協会(日造協)と日本造園組合連合会(造園連)は、7月に建設業労働災害防止協会(建災防)の協力の下、造園工事の樹上安全作業マニュアルに示す「造園ワークポジショニング作業」説明会を、都内の会場とWEB配信で開催した。樹上作業で求められる「墜落自体を防ぐ」「身体・樹木に衝撃荷重を掛けない」ことを重視した安全対策について関係者で理解を深め、造園ワークポジショニング作業を指導できる人材の養成や普及に努めた。  2022年の改正労働安全衛生法・同規則により、高さ2㍍以上の場所の作業で作業床の設置が困難な場合、フルハーネス型墜落制止用器具を使用することが原則となった。造園業界としても同器具の使用を推奨していたが、樹上作業時の安全性や作業性を疑問視する声が上がった。同器具は、作業員の墜落を制止するため上方に掛けてあるフックが落下の衝撃荷重に耐えられることが前提だが、樹木は樹種や環境によって1本ずつ個体が異なり、強度も数値で示すことが困難だからだ。健全に見える枝でも腐朽が進んでいる可能性がある。また、不安定な場所で、のこぎりや剪定(せんてい)ばさみ、チェーンソーなどの刃物を扱うため、自身のけがやロープの破損といった危険性もあり、それを起因とする事故も頻発している。  このような事態を踏まえ、日造協と造園連は造園業の安全作業を改めて整理。編集に関して建災防の協力も得ながら、3月に「造園工事の樹上安全作業マニュアル」を発行した。マニュアルには環境と目的に応じた作業フローを記載。まず、作業環境が高さ2㍍以上の箇所で、墜落により労働者に危険を及ぼす恐れがある場合は、足場の設置を求める。足場の設置が不可能であれば高所作業車を使用する。高所作業車の使用が難しく樹上作業が必要な場合は、今回の「造園ワークポジショニング作業を推奨する」とした。  造園ワークポジショニング作業は、樹上作業に適したハーネスと2本のロープなど専用器具を使用する。適切な長さに調節できる伸縮機能を備えたロープを作業箇所の上部にある幹や枝に回し掛け、安定姿勢と作業の安全性を確保。作業中はワークポジショニングロープと移動用ロープを伸縮調節し、常に張力をかけた状態とする。上下や横の移動時もロープの掛け替えを行い、最低1本以上のロープに張力をかけた状態を維持し墜落を防ぐ。  厚生労働省には本マニュアルをもとに造園の作業環境について説明し、意見交換を行った。「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン(基発0622第2号)」に記載されている、「墜落制止用器具のフック等を掛ける場所がない場合など、墜落制止用器具を使用することが著しく困難な場合には、保護帽の着用等の代替措置を行う必要性がある」との内容に対し、「上部に堅固な取り付け箇所がない樹上作業はこのケースに当てはまる」と見解を示すなど、樹上作業のリスクや国としての対応の必要性を共有した。  日造協技術委員会の荻野淳司副委員長は、「樹木の剪定作業現場で仲間の命が失われるような墜落・転落災害を、二度と発生させてはならない。全国で本マニュアルの理解を深め、発注者への周知・普及に努めたい」と強調した。墜落・転落災害の撲滅へ、造園業界の挑戦が始まった。(東京支社ビジネス開発事業部=栗田涼)