技術職員ゼロの自治体も ゆらぐインフラの整備・管理

中央
 地方自治体の土木部門の職員数は、直近の約30年間で3割と大きく数を減らした。技術レベルを担保すべき土木系技術職員(土木技師)も1割以上減っている。積算や監督・検査といった工事発注の根幹に関わる業務を、経験が不足している職員や、専門外の職員が担わざるを得ない場面も出てきている。インフラの整備・管理を担う自治体の土台がゆらいでいる。  「(委託した)工事設計が適正かどうかを見極めることが困難」。役場内に土木技師がおらず、事務系の職員に頼って対応している自治体が、総務省のヒアリングに寄せた声だ。「技術的な知識が十分ではなく、工事費の予算編成に当たっても課題が生じている」との声もあり、技術職員の不足が工事の品質確保だけでなく、事業の円滑な実施にまで影響を及ぼしかねない実態が垣間見える。  そもそも、自治体職員はピークの1996年度と比べて2023年度までに14・4%減っている。ただ、この中でも警察や消防に携わる職員は増加し、一方で土木部門で働く職員は技術系・事務系合わせて28・3%と大幅な減少となった。  土木技師も1997年度をピークに減少を続け、2024年度には13・2%減となった。大量採用世代の退職に、一時の公共事業量の急減が追い打ちをかけた。建築技師が、都市部での再開発事業への対応などを背景に5・1%増加したのとは対照的だ。  土木技師数は特に都道府県で24・2%減とその数が大きく減少している。大規模な事業を抱えるだけに、技術力の継承が課題となっている。  一方、市町村は5・2%減と全体で見れば減少幅は小さいものの、人口規模の小さな団体を中心に土木技師が一人もいない自治体も449団体あり、置かれた状況は厳しい。  小規模自治体であっても、工事発注が全くないわけではない。国土交通省の分析では、技術職員の人材が相対的に豊富な都道府県・政令市と比べ、人口10万人未満の市や町村ほど、技術職員1人当たりの工事発注件数が多くなる傾向が見られた。  事務負担の大きさは、入札契約適正化の取り組みの遅れにつながる。国交省が担い手3法に基づいて進めている週休2日モデル工事の導入や、施工時期の平準化は小規模自治体で遅れが目立つ。  老朽化するインフラのメンテナンスでは、こうした課題が一層、顕在化する。新設工事と比べ、維持補修の工事発注や計画作成は複雑だ。事務系職員が発注事務を担う市町村では、仕様が適正か判断できない事例も発生しているという。  日常の維持管理に加え、住民生活を支えるために更新事業を要する場面では「従来の体制・人員で対応できない」との声も自治体から聞かれる。  技術職員数は近年、横ばい傾向に見えるが、2040年ごろには、大きな割合を占める団塊ジュニア世代の退職が本格化する。新規採用が困難を極める今、発注者の体制の抜本的な見直しが求められている。