建設分野の育成就労制度 転籍制限「2年」が焦点に
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国土交通省は8月7日、建設分野の外国人材の育成・確保に関する有識者検討会を開いた。2027年度に始まる育成就労制度を巡っては、外国人自身の意向による転籍の制限期間を2年とすることが主要な論点の一つとなった。特定技能制度については、外国人の在籍型出向を可能にするかを論点に挙げた。
検討会では、建設分野での育成就労制度、特定技能制度の運用方針の策定を見据え、外国人材の受け入れ・育成に向けた課題について有識者・業界関係者の意見を聞く。6月に開いた初会合の議論を踏まえて今回、主要な論点を提示した。
育成就労については、1~2年の範囲内で分野別に設定するとされている転籍の制限期間について「2年とすることを認めるか」が論点となった。前回の議論では、「長く働くからこそ育成に責任を持つという考え方もある」とする意見や、「将来的には1年を目指すべきだが、移行期間が必要」との声が上がった。
転籍を巡ってはこの他、制限期間を2年とする際に求められる待遇向上について、昇給率をどのように設定するかも論点となる。転籍する外国人に必要な日本語能力をA1相当とするかも議論する。
この他、育成就労外国人を受け入れる企業に対し、建設分野の協議会への加入義務を課すかも論点とした。課さない場合は、代替措置の在り方を考える必要がある。
現行の技能実習で課しているような建設キャリアアップシステム(CCUS)活用をはじめ、外国人材の受け入れに対して求める上乗せ措置の設定についても考える。
特定技能では、例外的な受け入れ形態とされる在籍型出向についても検討する。前回の議論では、在籍型出向について「スキルアップのため有効」と前向きな意見があった。雇用の不安定化への懸念を払しょくするため、CCUSの活用を考えるべきとの意見や、モデル契約の作成による雇用関係の明確化を推す意見もあった。
また、適正就労に向けた巡回訪問を拒否するなど、ルールを守らないような事業者への対応も検討課題とした。
育成就労・特定技能に共通して中長期的なキャリアパスの形成も課題となる。既に受け入れ企業が外国人ごとに「キャリア育成プラン」を作成するとのイメージも打ち出しており、キャリアアップに向けて就業日数や取得すべき資格、実務経験、日本語能力の目安を示すこととしている。経験年数に応じた賃金上昇カーブの可視化や、日本語教育の支援などが論点となる。
外国人材の定着や、地域との共生も大きな論点となる。就労者としてだけでなく、生活者として外国人が地域と共生できるよう、生活基盤や支援の仕組みを考える必要がある。
検討会ではこの他、外国人建設技術者が直近8年間で約5倍に増加している現状を報告。ニーズが高まっている一方で、建設業法上の監理・主任技術者としての登用は日本語能力や資格取得の困難さから限定的だという。外国人のより多様なキャリア形成の観点から、中長期的に対応を議論する。