佐川急便が建設業界に新たなサービスを展開

岡山

「物流スキームの標準装備化を目指す」と話す髙月課長

 総合物流企業の佐川急便(東京都江東区)が、建設業界向けの新たなロジスティクス支援サービスを展開している。宅配便事業で培った全国ネットワークを強みに、現場近隣の「門前倉庫」と「荷役サポートセンター」を組み合わせた一気通貫の支援体制を構築。ゼネコンやサブコンの協力の下、現場の施工環境の最適化に取り組んでいる。同社が目指すのは「建設業における物流スキームの標準装備化」だ。  建設業界に参入したきっかけは「建設RXコンソーシアム」に協力会員として入会したこと。以前、造船事業者から当時では国内最大級となる造船に伴う物流改善の依頼があった。膨大な数の資材や部品があふれる造船現場での案件を完遂した経験から「これは建設業でも何か役に立てるのでは」と思い、建設業界と交流を重ねた。その中で、いくつかのゼネコンなどからの声掛けもあり、当分野に参画する契機となった。  「施工の時間を物流がむしばんでいる」。従来、建設現場での物流は、資機材調達や施工プロセスに溶け込んでいるのが実情。現場への納品は、メーカー直送が主流で搬入後の資材移動も施工スタッフが担っていた。営業開発部市場開発課の髙月洋明課長は「工期が決まっている建設業では、1分1秒が大事。遠方から届く資材の納品では、施工進捗に合わせた搬入が困難であることや施工スタッフが資材を運ぶなど、決して効率よいやり方とは思えなかった」と話す。年間約13億個の宅配便を扱うネットワークや、約3000社のパートナー企業と連携したチャーター輸送を武器に、これまで培ってきたノウハウや知見を生かしたコンサルを行いたいと考えた。  サービスの中核を担うのが「門前倉庫」と「荷役サポートセンター」。門前倉庫は、現場近隣(5~20㌔圏内)に、一時的に在庫を保管しておくための倉庫。そこにサプライヤーから届く資材を集約する。施工の進捗に合わせて必要な分だけを現場に届ける「ジャストインタイム納品」を実現している。遠方からのメーカー直送に比べ、現場に大量の資材を搬入しないため、安全性が向上し、狭い、散在、紛失といった問題も回避できる。  荷役サポートセンターは、同社スタッフが現場に常駐し、資材の荷受けから揚重、間配りまでを一貫して担う。楊重エレベーターの空き状況や施工状況を踏まえて調整しながら荷役を代行し、現場の施工スタッフが本来の業務に専念できる環境を整える。  門前倉庫と荷役サポートをセットで設計することで効果的な物流動線を実現できるのが最大の特長。すでに複数の建築現場でゼネコンやサブコンの協力の下、運用されている。1日約400人の作業員が出入りする現場でも、同社が構築した物流スキームにより、施工スタッフや管理者の負担が大きく軽減されたと評価されているという。  また、資材搬送以外の現場サポートにも取り組む。簡易売店や空調完備の喫煙ブースの設置など現場内の環境整備に着目。現在は、トライアルに向けて準備中だ。  建設業界で、ロジスティクスという考え方そのものが十分に浸透しているとは言えない。「将来的には、建設現場における物流支援が『標準装備』として当たり前になる社会を目指したい。建設分野のロジスティクスを1社で担うことなど到底できないが、同業はじめ多様なパートナーとも連携しながら建設業界での物流市場そのものを創っていきたい」と語った。(東京支社ビジネス開発事業部=徳田光紀)