横浜市会がPPP議連設立 鈴木太郎会長に聞く

神奈川

PPP議連の会長を務める鈴木議員

 6月、横浜市会の議員70人が集まり「公民連携推進横浜市会議員連盟」(PPP議連)を設立した。会長を務める鈴木太郎氏(自由民主党横浜市会議員団)は、自治体の財政的な制約が増す中で、これからは「稼ぐ公民連携」が求められていると強調する。横浜市でもPPP/PFIの導入検討が広がる今、行政と、これまで公共事業を担ってきた市内企業には、それぞれどのような取り組みが求められるのか、鈴木会長の展望を聞いた。(聞き手は報道部=監物由香理)  ―PPP議連を発足した目的と経緯は。  「昨年、公民連携事業について実践的に学ぶスクールに参加したことが契機だ。全国から集まったメンバーと1年間かけて得た知見を他の議員と共有し、より質の高い公民連携を目指すため、党派の垣根を越えて呼び掛けた」  ―「稼ぐ公民連携」とは、具体的にどのようなイメージか。  「単に収益機会を与えるのではなく、消費者や市民がお金を払ってでも利用したいと思えるような事業を、民間ならではの発想で柔軟に提供してもらうことが大切だと考えている」  「そのためには、民間の方々にも、社会に与える影響を公共的な視点から意識する、いわゆる『パブリック・マインド』をしっかり持っていただき、行政には『覚悟を持って民間に任せる行政』になってもらう。この両者のパートナーシップが公民連携の基本であり、横浜で実現したいと思っている形だ」  ―地元建設企業からは、PPP/PFIの拡大に対する懸念の声も聞く。  「これまでは大型案件でのPFIが中心で、地元企業が参画するには難しい環境だった。市営野庭住宅の小規模街区のように、もう少しロットを小さくするような工夫が求められる」   「VFM(バリュー・フォー・マネー)の考え方も、施工に対してのコスト削減でいかにバリューを出すかという点に偏りすぎている。それでは、資材価格や人件費が高騰する状況下ではPFIを導入する意味が無くなってしまう。工事だけでなく、企画全体の中でどう収益を生むかという視点が建設に携わる事業者側にも必要だろう。一足飛びには難しいと理解しているが、経験を積んで、PFIのスキーム自体を徐々に進化させていくことを期待したい」  ―中小企業にとっては、事業期間や資金調達の面でも参入のハードルが高いようだ。  「全国では、PFI法に基づいた手続きを取らない公民連携も始まっている。最近印象に残ったのは、岩手県柴波町の『オガールプロジェクト』。プロジェクトの一環で環境性能の高い住宅を分譲するに当たり、大手に依頼するのではなく、意欲がある地元の工務店や建設業者を指定して、設計・施工のノウハウが蓄積される仕組みにしたという」  「そうすると、エリア外でも『オガールのような住宅を建ててくれないか』という発注が起きてくる。公民連携でコンセプトを創り、地域経済への波及効果を狙えるという好事例だと思う。こういった事例をわれわれから行政に提案していくことで、地域経済を活性化し、市内企業にも新しい事業機会を提供できるのではないか」  「公民連携を通じて、これからの時代のニーズに応えていける事業者を育成するという面でも意義がある取り組みだろう。行政と民間がウィンウィンになる形を作るのも大切な視点だと思っている」  【略歴】鈴木太郎氏(すずき・たろう)1990年上智大学外国語学部卒業、三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入社。米国IT企業勤務などを経て2003年横浜市会議員に初当選、24年には議長を務めた。横浜市出身、58歳。