特別重点調査で死亡事故 担い手の確保は「安全」から
中央
8月2日、埼玉県行田市で建設作業員4人がマンホール内で転落し、死亡する事故が発生した。亡くなった4人は、埼玉県八潮市での道路陥没事故を受け、全国で進められている下水道管路の特別重点調査に従事していた。事態を重く捉えた国土交通省は、事故発生の2日後、地方自治体に作業時の安全確保の徹底を改めて呼び掛けた。
建設業界は、すでに10年以上にわたり、「給与・休暇・希望」の新3Kへと、業界イメージの転換を図ろうとしている。ただ、小中学生の子を持つ親にとって、建設業は「きつそう」「危険」といった古い3Kのイメージが依然として強い。死亡事故はこの「危険」の最たるものだ。
厚生労働省がまとめた労働災害の発生状況によると、2024年の建設業の死亡災害は前年比4・0%増の232人。建設業の死亡災害は、長期的には緩やかな減少傾向にあるものの、業種別で見れば今も最多だ。近年の気温上昇によって、熱中症による死傷者数も増えており、24年も全産業で3番目に多かった。
一方、危険な災害復旧の現場で活躍する建設業の姿を見て、「地域の守り手」としての役割を高く評価する子どもらの親もいる。災害復旧だけでなく、インフラの維持管理にも携わり、人々の暮らしや安全を守る建設業の姿は、イメージの向上につながり、親たちが子どもの入職に賛成する理由にもなる。
八潮市の道路陥没事故をきっかけに、老朽化したインフラの危険性が改めて社会に認知された今、建設業が果たす役割の重要性は一段と高まっているように感じる。インフラの老朽化に社会の関心が集まる中、不幸にも発生した今回の死亡事故は、建設業界が「やはり3K」というイメージを再び植え付けかねない。
特別重点調査の結果が出れば、今後、下水道関連の工事が全国で増加することが予想される。下水道管路内での作業には、硫化水素や酸素濃度の測定・換気、転落防止に向けた安全帯や保護具の使用など、特別な安全確保対策が求められる。建設業が次世代を担う子どもたちから選ばれる職業となるためにも、今回の事故を教訓として、建設業界を挙げて安全意識のさらなる向上と安全対策の徹底に臨んでほしい。