課長席㉖ 越部伸一氏(こしべ・しんいち=北区新庁舎整備担当課長)

東京
 王子駅周辺では、北区役所の移転・新築事業を契機にまちづくりの機運が高まっている。新庁舎は国立印刷局王子工場の一部に建設を計画。地下1階地上13階建て延べ約4万8500平方㍍規模を想定し、早期開庁に向けて基本設計を進めている。複数の施設に分散する現庁舎の機能を集約し、防災や地域交流を含め、あらゆる活動の「拠点」となる施設整備の方針を掲げる。  基本設計の委託先を決める公募型プロポーザルでは、「長期にわたる事業で建設費用もかかる。区民からの納得を得るためにも、多くの方に関心を持ってほしい」と、同区で初めてとなる公開型の最終審査を行った。審査員は公開型プレゼンテーションの審査経験がある外部学識経験者を中心に構成。事業者の選定後、その様子をYouTubeで公開した。周知活動にも余念はない。  事業の推進に当たっては「設計の原案を生かしながら建設コストをいかに抑えるかが鍵だ」という。基本計画策定時と比べ、昨今の建設コスト上昇の影響を考慮すると建設費は2倍近くが想定された。今年7月に公表した基本設計の中間報告では『無駄をそぎ落とし、機能を極める』という方針の下、曲面形状の躯体の削減など減額要素を抽出し、約50億円の削減を可能にした。現段階の概算工事費は約535億円。「性能や品質を保ちながら、コストダウンへの工夫を重ねていく」考えだ。  新庁舎の建設予定地を含む王子駅中央口~南口前エリアは、駅周辺まちづくりの先行実施地区に位置付けられる。住友不動産(新宿区)を事業協力者とする市街地再開発事業や王子駅の南北をつなぐ貫通道路の整備、中央口付近の歩行者広場整備などが計画されており、26年度の都市計画決定を目指している。大規模改修が見送られているシンボルタワー〝北とぴあ〟を含む駅北口周辺地域でも、同年度内の整備計画策定に向けた協議を進めている。今後、「まちづくりと連携した新庁舎整備が不可欠となる」と新庁舎整備の重要性を語っている。  自身は、建築設計事務所への勤務を経て、東日本大震災を機に「できれば地元で働きたい」という思いが強くなり入庁した。北区で生まれ育ち、変わりゆくまちの様子をその目で見てきた。「地元のまちづくりに関われる以上の幸せはない。『ずっと住み続けられるまちづくり』に貢献したい」。 【略歴】2012年度に営繕課採用。22年度に現職に昇任。北区出身。