住宅耐震化率92・8%に 「TOUKAI-0」のその先
静岡【2025/09/01 静岡版に掲載】
冨田征範氏
静岡県は2001年から木造住宅の耐震化事業「TOUKAI-0」を進め、無料耐震診断や補強工事助成などにより県内住宅の耐震化率は23年時点で92・8%に達した。25年度末目標の95%まであと一歩となった。「TOUKAI-0」は、9月1日時点では本年度末で終了する予定だが、「耐震性なし」と判断された住宅は、未だ約10万5000戸ある。能登半島地震で旧耐震基準の住宅が大きな被害を受けたこともあり、県は木造住宅の耐震化とともに、耐震シェルターや防災ベッドの普及など“減災化”の取り組みも強化していく考えだ。緊急輸送道路沿道の施設、大規模建築物の耐震性への課題も残る。
これまでの取り組みや今後の方向性について、静岡県くらし・環境部建築安全推進課長の冨田征範氏に聞いた。
住宅の耐震化率92・8%に
―「TOUKAI-0」の成果について。
「01年に開始した無料の住宅耐震診断は、24年度末で累計9万8467件に上り、全国2位の数字となった。25年6月末時点では9万8977件。02年に始めた耐震補強の助成は2万8495件に達しており、全国トップ。静岡県が先進的に取り組んできた成果だと考えている」
―住宅の耐震化率は。
「総務省が実施した住宅・土地統計調査に基づく結果によると、県内の住宅の耐震化率は23年時点で92・8%。全国の約90%を上回っている。県では本年度末までに95%の目標を掲げており、おおむね達成に近づいている。さらに、18年には『耐震性なし』の住宅は約15万2000戸あったが、23年には約10万5000戸まで減っている」
高齢者住宅への支援拡充
―「TOUKAI-0」は本年度で終了する。
「国は3月、南海トラフ地震の被害想定見直しに伴い、防災計画を変更した。35年までに耐震化が不十分な住宅のおおむね解消を目指しており、耐震改修が難しい場合は耐震シェルターや耐震ベッドなどを導入し、最低限の命を守る“減災化”の選択肢を広げるとしている。県でも『耐震性なし』とされた約10万5000戸の住宅が残る現状を踏まえ、『95%』の数値達成で終わっていいものではない」
「能登半島地震では旧耐震基準の住宅が大きな被害を受け、高齢化率の高い地域ほど耐震化率が低くなる傾向が見られた。高齢者住宅では資金の負担や後継者不在が耐震化の障壁になっている」
「25年4月1日時点で、静岡県内の高齢化率は30・9%と過去最高になった。本年度から耐震シェルターや防災ベッドへの補助を拡充して支援に取り組んでいるが、来年度からはさらに力を入れたい。現在、市町や関係団体と協議しながら、今後の支援制度を検討中」
緊急輸送道路沿道建物も耐震化を促進
―緊急輸送道路沿道の建物について、耐震化の現状は。
「23年1月に耐震診断の結果を公表したが、対象の建物401棟のうち340棟が『耐震性なし』と診断された。耐震補強や除却により、24年度末時点では296棟まで減少した」
「約6割が伊豆地域に集中している。対象の施設所有者のもとへ戸別訪問しているが、住宅や店舗は高齢の所有者が多く、木造住宅と同様に対応が難しいケースもある。耐震化の補助金の補助率は最大5分の4と手厚いこともあり、丁寧に周知を重ねていく」
ホテルの耐震化に課題
―大規模建築物の耐震化の現状と課題について。
「17年に病院やホテル、学校などの大規模施設を対象に実施した耐震診断では、303棟のうち84・8%に当たる257棟が『耐震性あり』と診断された。24年度末時点では補強によって『耐震性あり』と判断された施設が266棟、16棟が除却されたことにより、対象棟数に対する『耐震性不足解消率』は93・1%まで上昇した」
「病院や学校などの公共建築物は耐震化が進んでいるが、民間施設ではホテル・旅館に課題が残る。営業しながら耐震補強することが難しく、コロナ禍の影響で経営体力が弱っている運営企業もあることから、慎重な傾向にある」
「県の耐震改修促進計画は5年ごとに見直しており、本年度が3期計画の最終年度となる。次期計画からは『耐震性不足解消率』の具体的な指標を設定し、現在の補助制度を生かしつつ、戸別訪問などを通じて啓発に努めたい」
