国土強靱化の事業規模 〝20兆円強〟ってどんな意味?
中央
予想を超える 災害が毎年発生している。優先すべきは国民の命と暮らしだ
Q.「第1次国土強靱化実施中期計画」の5年間の事業規模は「およそ20兆円強程度」。これはどういう意味なの?
P.数字に「~強」がつく場合、示された数に〝少し余り〟があること、反対に「~弱」がつく場合は、示された数よりも〝やや少ない〟ことを意味します。「20兆円強」は、低く見積もれば「20兆円余」と受け取ることができます。
Q.だったら「約20兆円」でいいんじゃないの?
P.そうとも限りません。できるだけ支出を抑えたい財務省と、事前防災を急ぎたい与党は、計画の決定時点では「20兆円強」という、あいまいな表現で決着しました。「20兆円強」という表現であれば、実際の事業規模が「20兆円余」にとどまることも、「20兆円台半ば」まで増えることも許容できます。
複数の与党幹部は「20兆円は最低ライン」という趣旨の発言をしています。情勢次第で事業規模が大きく変わることになります。
Q.20兆円よりも事業規模が大きくなるの?
P.計画の初年度に当たる2026年度の事業費は、この秋の補正予算に計上される見通しです。「20兆円強」には、ここ数年で急速に進んだ資材価格と人件費の上昇分は盛り込まれています。ですから、初年度分の事業規模は単純に5年で均等割した4兆円ということになるかもしれません。
ただ、物価の上昇基調は今も続いています。計画では、今後の資材価格・人件費高騰の影響を「予算編成過程で適切に反映する」としています。さらに物価上昇が進めば、2年目以降の事業規模が大きくなることはあり得ます。
Q.物価上昇分だけを反映するということ?
埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故によって、社会全体でインフラの老朽化に対する関心が集まっています。8月上旬からの大雨も、各地に水害をもたらしました。国土強靱化の目的は、事前防災によって、自然災害から国民の命を守り、経済・社会を安定的に維持することにあります。自然災害やインフラの老朽化が国民生活にこれまで以上の脅威を与えるようであれば、物価上昇分に限らず、事業費を上乗せして対策を加速し、その脅威を取り除く必要があるでしょう。