無人建機の安全対策検討 「Q&A」で注意点を提示
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建設現場のDX化・省人化の手段として、自動で動く建機や遠隔で操作する建機の導入・普及が期待される中、無人建機を使用する際の安全性が課題になっている。厚生労働省では、無人建機を使用する際に必要な安全対策を検討する専門家検討会を今秋に立ち上げ、2026年6月末をめどに全体像を整理する方針だ。
建機の自動化技術や遠隔化技術は、大手ゼネコンを中心に開発が進み、すでに複数の現場で実証実験や試行導入が行われている。一方、現場の安全を守るためのガイドラインや安全の観点から製品に求める水準の検討が追いついておらず、過剰な安全対策を講じている現場も多いという。
専門家検討会では、自動化・遠隔化技術の状況や先行事例から、「無人建機だから起こりうるリスク」を分析しつつ、無人建機を使う場合に必要な措置・規制の全体像を検討する。全体像を踏まえた上で、クレーンやブルドーザーといった個別の機械を使用する際の注意点についてQ&Aの形で提示する考えだ。
検討の論点の一つが建機の運転制御方式だ。遠隔で操作する場合、通信環境が悪い場合に労働災害が起きる可能性がある。操作から作動までのタイムラグや、通信エラー、第三者からのハッキングなどが課題だ。
建機に取り付けたカメラに映る現場映像の解像度や遠近感覚の測り方なども、災害リスクにつながる。山間部など、通信環境や視界の悪い場所で作業する場合には、高水準の安全対策が求められる。遠隔操作する作業者がヘルメットなどを装備する必要性も検討する。
自動施工の建機の場合は、通信環境の要求水準は低くなるが、人や物体に近づいた場合の接触防止機能が重要となる。
また、人と建機が混在している現場と、人が立ち入らない無人区画でも必要な措置が異なるため、検討が必要だ。人と建機が混在する場合、自動接触防止機能や自動安全停止機能を持つ建機の使用が望ましい。無人区間で作業する場合は、人が現場に出入りしないような管理・監視対策の要求水準が高くなる。
無人建機の導入・普及に向けた周辺環境整備は、他の省庁でも進んでいる。国土交通省では、「自動施工における安全ルール」を地域建設業でも取り組めるように改訂し、年度内に土工以外の工種でも施工する。
経済産業省でも、AIを利用したシステムや機械が事故を起こした場合の民事責任の在り方を検討中だ。8月18日に開いた検討会の初会合では、AIが空間認識・機体制御を行って動く機械による事故をユースケースとして検討を進めることを確認し、「無人建機も検討対象になりうる」(商務情報政策局情報経済課)としている。