国家公務員も技術職員不足 官民で人材獲得競争激化

中央
 国家公務員の一般職採用試験(大卒程度)の土木系の合格者数が激減している。2025年度の合格者数は前年度と比べ、26・0%減の231人。採用予定に対する合格者数は52・1%となり、2年連続で合格者数が採用予定を下回った。技術系人材の獲得競争は年々激化しており、地方自治体に比べると人員が充足していた国の技術職員でさえ、採用難に苦慮する実態が鮮明になってきている。  国家公務員の技術職員は、キャリア官僚と呼ばれる総合職の採用数はかろうじて充足しているが、一般職の採用が年々厳しくなってきている。少子高齢化が深刻化する中で、技術系人材が社会全体で枯渇し、企業間だけでなく、官民の間でも技術系人材の獲得競争が激しさを増している。  こうした事態を重く見て、8月7日に石破茂首相に提出された人事院勧告には、技術系人材に特化した採用試験を検討したり、合格者を早期に採用する仕組みも整える方針が示された。  採用市場での競争力を向上するため、給与水準も引き上げる。大卒の一般職の初任給を前年度と比べ5・5%増の23万2000円とし、賞与や手当も増額する。  ただ、国の省庁が採用のターゲットとする技術系人材にとって、官民の給与格差は依然として大きい。他産業との人材獲得競争を勝ち抜くため、大手ゼネコン5社は大卒の初任給を30万円に引き上げており、追随する準大手・中堅ゼネコンも出てきている。  初任給の上昇は、若年人口の減少によるところが大きいが、政府も賃金の引き上げを政策の柱としてきた側面もある。公共事業では、総合評価落札方式で賃上げを実施する企業に対する加点措置を22年度にスタート。このことが、特に大手企業が賃上げに踏み切るきっかけとなり、発注者側の技術職員の採用難を招いている、との見方もある。  一方、国の技術系職員の業務量は減少するどころか、増加の一途をだとっている。国土交通省では、自然災害の激甚化・頻発化によりTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の派遣人数は年々増加している。  人手不足がより深刻な自治体に対しては「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)のように、広域でインフラを管理する仕組みが整いつつあるが、国の省庁にこうした手法は今のところない。むしろ、自治体に代わって災害復旧やインフラの維持修繕を代行する「権限代行」の適用範囲が拡大し、厳しい人員の中でも、自治体の災害対応やインフラ管理をサポートする役割が強まっている。