建機の「部分自動化」、地域建設業も実装

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 国土交通省は、直轄工事で土砂の積み込みや運搬といった一部の作業を選び、汎用的な建機を使って自動化する「部分自動化」を導入するための要領類を作成する。地域建設業が自動施工に挑戦できるよう、環境を整える。まずは条件が合致し、受注者が希望する現場で試行し、要領類の整備に生かす。  国交省が2024年度に打ち出したi-Construction2・0では、施工の自動化・遠隔化により建設現場に必要な人員数を削減し、40年度までに3割の省人化を達成するとの目標を掲げた。このため、ダムなどの大規模現場で先行し、自動施工の導入を拡大するとの方針も表明。  これを受け、24年度には成瀬ダムの堤体打設工事や原石山採取工事、霞ヶ浦導水石岡トンネル新設工事といった大規模土工を伴う現場で大手ゼネコンが自動施工の試行工事を行った。  その一方、浅間山火山砂防(地蔵川砂防堰堤工事)では、地元の渡辺建設が自動キャリアダンプを使って堰堤材料を運搬するなど、汎用的な機械を用いた部分自動化を実現した。  大規模現場の条件に合わせて複数の建機が協調して稼働するような全自動施工は、地域建設業にとってハードルが高い。建機オペレーターや作業員の確保対策が課題となる中、国交省はダンプによる運搬やバックホウによる積み込みといった一部の作業を自動化し、省人化に取り組む建設業の裾野を広げたい考えだ。  このため、25年度は汎用的な機械による部分施工の実装に向けたガイドラインや要領を整備する。運搬や盛土材の集約・整形といった作業ごとに、活用可能な自動化建機を対応させる。施工計画に基づき、可能な範囲で自動化建機を導入するイメージだ。  自動施工の導入には、初期コストやシステムの運用コストがかかる。地域建設業がコスト・省人化効果を見比べて、導入の要否を判断できる「自動施工ミュレーター」が必要になる。施工内容や数量、地形条件を踏まえ、従来施工と自動施工でそれぞれ必要な人員・建機・費用を試算できるシステムとなる。  まずは、製造業の工場を対象とした既存の生産計画シミュレーターを実際の建設現場の施工計画に試行的に適用する。シミュレーションモデルの作成や受発注者へのヒアリングを通じ、適用の効果・課題を調べる。例えば、建機の形状や移動、地形の変化を再現できないといった課題が想定されるという。  シミュレーターは、現場での自動化建機の最適な稼働・配分や、施工上のボトルネックの特定にも活用できる仕組みとする。今後、国交省としてシミュレーターが備えるべき機能要件を整理。民間によるシステム開発を喚起する。