ワンデーレスポンス 自治体への定着、ほど遠く
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現場で働く技術者の時間外労働削減に効果があるワンデーレスポンスやウイークリースタンスが、地方自治体の発注工事に定着していない。全国建設業協会(全建、今井雅則会長)が会員企業に調査したところ、市区町村の実施率はいずれも30%前後にとどまり、最も実施率の高い国土交通省との差は約40ポイントある=グラフ参照。調査では「発注者側の職員が不足し、回答が遅い」といった声も聞かれ、自治体の人手不足が受注者である建設業にのしかかる構図も垣間見える。
ワンデーレスポンスは、受注者からの問い合わせや指示依頼に対し、発注者の監督職員が1日以内に回答する取り組み。1日で回答できない場合も回答期限を明示する。受注者の業務時間外の作業を伴う期限を設定しないウイークリースタンスとともに、現場技術者の長時間労働を削減するため、国土交通省の直轄工事で始まった取り組みだ。
全建が会員企業1891社に行ったアンケート調査によると、ワンデーレスポンスが「おおむね行われている」との回答は、国交省が72・6%だったのに対し、市区町村は32・8%。都道府県・政令市も45・4%と半数に満たない。ウィークリースタンスは、国交省が69・6%だったが、都道府県・政令市が36・6%、市区町村が27・7%とさらに低調だ。
調査に寄せられた会員企業の自由回答を見ると、「回答待ちの状況が続き、工事が進まない」などと、受注者にはこうした実態に対する強い不満がある。「監督員の知識や経験が少なく、回答が遅い」「情報共有システム(ASP)で書類を提出しても、何日も閲覧されない場合がある」といった声もあり、自治体の職員不足が、ワンデーレスポンスを妨げている実態が分かる。
さらに「(発注者側の)働き方改革を理由に、レスポンスが遅れるケースが増えている」との回答もあり、監督職員の残業を減らすために、受注者側にしわ寄せが生じているとの声も聞かれる。
■書類の簡素化 二重提出、過剰提出も
工事書類の簡素化についても、国・自治体の差は大きい。簡素化が「進んでいる」「一部進んでいる」と答えた会員企業は、国交省の82・9%に対し、都道府県・政令市で57・9%にとどまり、市区町村は38・0%とさらに少ない。
「ASPを利用しているが、紙での提出が求められる」と、依然として書面とデータの二重提出が求められているほか、「他社が工事成績アップのために不要な書類を提出する。発注者も評価するので、自社でも作成せざるを得ない」と、過剰に工事書類を作成する習慣も現場には残る。
「書類を簡素化していても、内容の水準が高度化し、負担が大きい」「ICT、熱中症対策、週休2日、建設キャリアアップシステムなどへの手間を含めると手間が増えている」といった意見もある。