予算なのに金額がない 概算要求の「事項要求」って何だ?

中央
Q.最近の新聞によくでてくる「事項要求」ってどんな意味なの? P.中央省庁の概算要求で使われる仕組みです。8月末にまとまった2026年度の概算要求の記事にも頻繁に出てくるよね。キューメットも「金額を明示しない」「予算編成過程で検討する」という説明をよく目にするんじゃないかな。 Q.金額を示さないって、それじゃあ予算要求にならないんじゃないの。なぜそんな仕組みが必要なの? P.事項要求は、中央省庁の概算要求のルールである「概算要求基準」で認められています。この基準は「シーリング」(天井)と呼ばれ、要求額の上限を各省庁一律に定めています。  でも、シーリングを守っていたら、予算が硬直的になったり、新しい政策のために既存の政策を削らないといけなくなります。金額を示さない事項要求を使えば、政策的にどうしても進めたい事業や、政権の政策に沿った事業に予算を計上しても、シーリングを超えることはありません。そのために事項要求という仕組みが使われるんだ。 Q.だったら、シーリングなんてなくせばいいじゃない。 P.そうもいかないんだよ。無条件に予算が膨れ上がるのは避けないといけません。ただでさえ、高齢者人口の増加によって社会保障費は自然に増加しています。事項要求された予算は、毎年秋に編成される補正予算に計上されるものが大半です。概算要求は、建前として翌年度の当初予算のためのものですが、実際には〝補正予算ありき〟でまとめています。 Q.今回の概算要求では、どんな事業が事項要求になったの? P.26年度の概算要求では、高校授業料の無償化や物価高対策と並び、前回紹介した国土強靱化実施中期計画の関連事業も事項要求されています。国土強靱化の関連予算は、2025年度で終了する5か年加速化対策も事項要求の対象となり、毎年度の補正予算に計上してきました。実施中期計画の事業費も、補正予算への計上を前提に編成作業が進んでいます。  ただ、石破茂首相が9月7日に退陣を表明しました。事項要求には石破政権の独自政策も多く盛り込まれています。新しい首相の政策によって、事項要求がどれだけ予算に反映されるかも変わってくるでしょう。