知多半島で鳥インフルエンザの防疫措置に奔走 建設業者45日間の戦い②

中部

夜間作業の様子

 知多半島で初めて発生した高病原性鳥インフルエンザで防疫対応に奔走した地元の建設業者たち。彼らはその過程で確認した課題を整理し、備えを進めている。知多土木研究会と知多農業土木研究会と協定を結んだコベルコ建機トータルサポート、瀧冨工業、西尾レントオールにも話を聞いた。(名古屋支局=徳山貴史)  コベルコ建機トータルサポートの山村敏弘さんは当時を振り返り、「特異な状況ではあったが、普段の付き合いがあったので対応できた。災害時にはできる限り対応する」とコメント。瀧冨工業常滑営業所の加藤和幸さんは、「地域の安全と安心を守るには建設業者との連携を密にする必要があった」と協定締結の狙いを説明する。また、西尾レントオール中部第1営業部の柏木博志さんは、「被災者の救援活動やインフラ復旧に貢献できることは、企業の社会的責任を果たすことになる」と災害対応の意義を強調した。  知多土木研究会の花井会長も、「各社の工事が中断するなど、本業への影響は大きかった。次から次に防疫場所も移動し、発生箇所は常滑市、半田市、阿久比町と広域になったことで多くの人に対応をお願いすることになった。民間サイドで実行力のある協定を新たに結ぶことが、現在発注者と締結する協定をより実効性のあるものにし、地域の安全と安心に寄与できると判断した」と協定の意義を説明し、有事に臨む覚悟を示した。  初動対応で重要な情報伝達についても、「各方面から指示が入り、情報の精査に手間取る場面もあった」ことを踏まえ、花井会長が「初動から実働まで一括して本部で対応することで、誤った指示を防ぐことができる。とりわけ優先順位を決めた指示の出し方が重要になってくる」と指摘。柏木さんも「要請を受けた後、要請内容の整理が重要となる。同じ資機材の要望が複数入ることが多くあり、必要数が正確に把握できない場合がある」として、「精度の高い伝達を心掛けてほしい。資機材に加え、現地に調達する手段の確保も同時に行う必要がある」と要望。その上で、「地震、台風、近年多発している集中豪雨など、災害の規模、地域によって応急復旧に必要な資機材は違う。地域の安心と安全を確保するため協定書を交わした。可能な限り準備を進めたい」とした。  立会人として参加した愛知県知多建設事務所の長谷川和利所長は、「現在、地域の建設会社各社と公共土木施設に関する防災安全協定を締結しているが、今回の協定により相乗効果が生まれ、地域の災害対応能力が高まることに期待する」と両者に感謝。また、愛知県知多農林水産事務所の近藤修平所長は、「防疫措置が完了できたのは、両研究会とレンタル機材会社の協力のおかげ。いつ災害が発生するかわからない中、地域の生活を守るためには、地元建設会社やレンタル機材会社の支援が必要になる。引き続き、両者の発展的な協力体制をお願いしたい」と述べた。  自然災害を含め、多くの市民が知らない所で、建設業者やレンタル機材会社は地域の生活を支えており、その役割は多岐にわたっている。まとめとして、花井会長は、「今回の事案にスムーズに対処できたのは、両研究会に同一会員が所属している知多管内の特異性も大きく関係した。両研究会が常日頃から活動を通じた研さんの中で信頼関係を構築し、結束力を強めていたことが体制構築に寄与し、機動力を発揮できた要因となった」と振り返った。さらに「今回のレンタル機材業者との協定締結は、有事の際の資機材の安定供給を実現する上で大変意義があり、両研究会の防災体制を強化する。今後も災害を含めた地域の安全を、地域建設業者が先頭に立って守れるように関係者と協力しながら精進していきたい」と話している。