中村土木建設と日本福祉大学工学部が非住宅木造建築を建設
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中村社長(右)坂口准教授
ナカミライズホールディングスの中村土木建設(東海市、中村太紀社長)は、オフサイト型CLTモジュール工法を用いた共同住宅を建設する。日本福祉大学工学部(半田市)の坂口大史准教授と協力して、建設業界が求めている「省力化」を追求するプロジェクトで、林野庁の補助事業「CLT活用建築物等実証事業」を活用し、同社の社員寮として10月に着工する。非住宅木造建築の将来を見据えた取り組みについて中村社長と坂口准教授に話を聞いた。(聞き手は名古屋支局=徳山貴史)
―非住宅木造建築プロジェクトのきっかけは。
中村「欧州の視察で、改めて非住宅木造建築物が普及していることに驚いた。環境にやさしく二酸化炭素の排出量を抑制できるので、国内でも増やしていく必要があると考え、坂口先生と協力して始めた。なぜ国内で普及しないのかを考えると、建築コスト高やCLT製造量の不足などがある。鉄筋コンクリート造や鉄骨造とは違う利点に注目してほしいので、まずは社員寮建設(木造2階建て延べ471平方㍍)を実証実験と位置づけて取り組む」
―利点については。
坂口「人材確保が困難な状況が続いている中で、人件費と建築資材の高騰に直面している。この課題を解決する方法の一つが『省力化』だ。CLTのパネルサイズをそれらのモジュールに合わせることで、CLTユニットを実現。それを量産化することで、コストの削減につながるとともに品質の安定化が図られる。また、工期の短縮が見込まれるので、人手不足の解消や現場での作業が減ることにより、その結果、労働災害の減少にも貢献できる」
―施工の特徴は。
坂口「今回、独自の取り組みで、幅約2000㍉のユニットを2分割してトレーラー輸送を行う。特殊車両を使用しないので輸送コストを削減することが可能になる。大手ハウスメーカーが実践してきたことと同じ路線で進んでは意味がない。普及させることを目的として集合住宅のプロジェクトに挑む」
―将来的な需要について。
中村「現状はコストが課題だが、ユニット化により将来の低減の可能性は明確になると思う。量産化を目指したCLTユニットによる集合住宅は少ないが、ワンルームマンションなどでは増築が容易になる可能性もある。社員寮の他、介護施設や高齢者住宅、ホテルなどに展開できる。木質の内装は住み心地が良い。地球環境のためには木造建築物の普及が必要なので、日本全国の誰しもが参考にできるCLTユニット化事例として建設する。建設費に対する補助金を活用できる場合もあるので、2026年5月の完成時にはぜひ見学にきてほしい。日本中の同じ考えの仲間を増やしていきたい」