県 流域下水道経営懇話会 流域下水道経営ビジョンの改定へ

神奈川
 神奈川県は9月18日に開催した県流域下水道経営懇話会(会長・宇野二朗北海道大学公共政策大学院教授)で、2021年3月に策定した「神奈川県流域下水道事業経営ビジョン」を26年度に改定する方針を固めた。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故や脱炭素社会の実現に向けた動き、官民連携方式の活用など社会状況が変わってきたことから、施策や収支見通しなどを見直す必要があると判断した。国の道路陥没事故を踏まえた提言や技術基準の検討を反映できるスケジュールで改定作業を進める。  神奈川県流域下水道事業経営ビジョンでは、基本理念や流域下水道事業の課題、21年度から10年間の主要施策と収支見通しを示す。主要施策としては処理場の機械・電気設備の改築更新、施設の耐震化・耐水化、下水処理場のネットワーク化などを定めている。収支見通しでは、相模川流域の建設改良費は20年度と比較して平均約26%増、酒匂川流域は約61%増と想定した。  必要に応じて見直しを行うこととしていたが、経営ビジョンの策定当時から物価や人件費は上昇、国の交付金の要望額に対する内示率が減少傾向にあるなど経営状況は大きく変わった。加えて、埼玉県八潮市では1月に下水道を要因とする道路陥没事故が発生。脱炭素社会の実現や下水汚泥など資源の有効利用に関する動向、ウォーターPPPの推進などの社会的な要請も高まっていることから、ビジョンを改定することとした。  改定時期は道路陥没事故を踏まえた国の有識者委員会の提言、技術基準等検討会の中間整理などを反映できる26年度とする方針。主要施策や収支見通し、財源や人材の確保など事業運営の取り組みを見直す。  主要施策のうち処理場の機械・電気設備の改築更新、施設の耐震化については、国の交付金が十分に確保できなかったことから24年度時点で実績が目標を下回っている。県の担当者は経営ビジョンの改定に当たって「国費に頼っていた経営から、施設の整備に着目した体制に改めたい」と話し、国庫補助金が充当されない場合には市民負担金などを十分に活用して事業を進めたいとした。    主要施策のうち「改築更新の重点化」では、計画策定から10年間で目標耐用年数を超える約1300設備のうち約300設備を更新する。中間目標として25年度までに180設備(相模川流域160設備、酒匂川流域20設備)を更新する予定だったが、24年度時点の実績は88設備(相模川流域79設備、酒匂川流域9設備)にとどまっている。  「施設の耐震化」では約100施設のうち耐震化されていない約30施設を更新することし、中間目標では相模川流域と酒匂川流域の耐震化率約90%を目指していた。ただ、24年度時点の耐震化率は相模川流域、酒匂川流域ともに約80%となっている。  いずれの施策についても国の交付金が十分に確保できず、計画通り事業を進められなかったことが要因としている。  この他、汚泥の集約処理(酒匂水再生センターと扇町水再生センターの汚泥処理施設の集約)や処理場のネットワーク化(寒川平塚幹線の整備)はおおむね計画通りに進んでいる。