公共工事に「労務費ダンピング調査」 直接工事費97%未満で確認
中央
国土交通省は、改正入札契約適正化法に基づき、地方自治体をはじめとした公共発注者に原則全ての公共工事で「労務費ダンピング調査」の実施を求める。入札金額の内訳書に記載すべき事項として労務費を位置付ける。落札候補者の入札金額内訳書に記載された直接工事費が官積算の97%を下回っていた場合、労務費の適正性を確認する。合理的な回答が得られなければ注意喚起・警告の上で建設Gメンに通報する。
労務費ダンピング調査の実施に向けた公共発注者ガイドライン案をまとめた。「労務費の基準」を著しく下回る見積もりを禁止する改正建設業法や、公共工事で労務費を明示した入札金額内訳書の提出を規定する改正入契法の全面施行を見据え、12月にも公表する。
低入札価格調査制度や最低制限価格制度を補完する新たなダンピング対策となる。両制度を導入している場合、失格しなかった落札候補者に労務費ダンピング調査を行う。未導入の場合は最低価格で応札した落札候補者に労務費ダンピング調査を行う。
調査の前提として、ガイドラインでは入札参加者が入札金額内訳書に記載すべき事項を整理。材料費と労務費の他、技能者の法定福利費の事業主負担分、安全衛生経費、建設業退職金共済制度の掛金を明記。この他にも必要な経費があれば記載する。今後整備する入契法施行規則で示す。
内訳書の様式も例示。材料費・労務費は直接工事費の内数として記載する。当面の間、積み上げ可能な方式で積算した労務費を計上することとし、市場単価方式や標準単価方式により積算した労務費の計上は不要とする。法定福利費の事業主負担分や建退共掛金は現場管理費の内数として記載する。安衛経費の詳細な内訳作成は困難なため、工事原価の内数とする。
労務費ダンピング調査では、落札候補者を対象に直接工事費が「一定の水準」を下回っていないかを確認する。現行の中央公契連モデルでは直接工事費の97%を上回っていれば官積算の労務費が100%含まれるため、直接工事費の97%を確保すべき水準の基本とする。
この水準を下回った場合、落札候補者が内訳書で示した労務費の合理性を確認する。12月にも示される「労務費の基準」や、公共工事設計労務単価を踏まえているかが確認のポイントとなる。例えば、規模が大きく高い施工効率を想定している場合や、発注者の想定と異なる高い施工性の工法・技術を採用する場合などは「合理的」と見なせるとした。
一方、下請けから徴収した見積書の内訳を確認せずにそのまま転記したり、最新の公共工事設計労務単価を用いずに労務費を算出した場合や、下請けが見積書に記載の労務費の減額変更を求めている場合は「合理的ではない」とした。
ただし、積算システムの機労材集計機能などを用いて官積算の労務費を集計し、入札金額に記載の労務費の方が上回っていれば適切な労務費を確保できていると見なし、落札候補者への確認は不要とする。
合理的な回答が得られなければ、適切な労務費・賃金支払いを確保するよう注意喚起・警告を書面で行い、建設Gメンに通報する。通報した場合でも、落札候補者と契約することはできる。通報は、Gメンが立ち入り調査を検討するための端緒情報として扱われる。