都道府県・政令市の半数で 実態踏まえ独自歩掛作成
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国土交通省が都道府県・政令市を対象に、工事発注時に使う独自の歩掛の作成状況を初めて調べたところ、全体の約半数が「ある」と回答した。設定理由としては、国交省の標準歩掛と地方自治体が発注する工事の現場実態との乖離(かいり)を挙げる回答が多かった。国交省は、独自歩掛の事例集や作成手順をまとめ、実態に見合った歩掛の作成を促していく。
自治体発注工事の歩掛の多くは、国交省の直轄工事で用いる標準歩掛を使用している。しかし、地域建設業からは、直轄工事で想定されるロットが大きく、自治体の小規模な工事や地域特有の事情を反映できていないとの声が寄せられていた。
そこで、都道府県・政令市を対象に2025年度に初のアンケート調査を行ったところ、独自歩掛があると回答したのは全67団体のうち33団体(49%)だった。
独自歩掛を設定している団体にその理由を聞いたところ、「現場実態との乖離」が20団体(34%)で最多。次いで、毎回見積りを取るのが負担になるといった「現場職員からの声」を挙げた自治体も16団体(27%)あった。「事業者からの声」は10団体(17%)。「その他」の13団体(22%)には、急傾斜地崩壊対策事業・港湾事業のように、国交省の標準歩掛にないのの、使用頻度が高い工種で独自歩掛を設定する例などがあった。
独自歩掛の設定方法は、自治体職員や建設技術センターによる「直轄調査」が11団体(24%)で最多。「施工会社に対するヒアリング調査」は9団体(20%)、建設コンサルタントへの「業務委託」は8団体(18%)となった。
「その他」の17団体(38%)では、複数の施工業者からの見積り徴収による作成や、過去に存在した標準歩掛や工法協会の歩掛、建設物価調査会・経済調査会の公表している歩掛を活用している例があった。設計金額区分ごとに算定式を用いて算出する自治体もあった。
一方、独自歩掛のない34団体に未設定の理由を複数回答で聞いたところ、「都度見積り徴収で歩掛を設定し積算」と回答した自治体が28団体(82%)で最も多かった。
この他、妥当性に関する「会計検査院からの指摘の懸念」を挙げる回答も17団体(50%)と半数を占めた。技術職員不足を背景に「調査の手間」を挙げる団体も13団体(38%)あった。
また、独自歩掛を作成せずとも、不調対策として設計・積算方法の見直しを標準歩掛を準用して適宜実施している例もあった。
独自歩掛のない団体に作成の意向を聞くと、「ない」が27団体(75%)を占めた。国交省は独自歩掛の好事例を収集し、2025年度内にも事例集としてまとめる。標準的な作成方法も示し、独自歩掛の作成に前向きな自治体を後押しする。