魅力ある建退共制度提言 「複数掛金」で掛金日額上乗せ
四国
勤労者退職金共済の建退共事業本部は、複数掛金制度の導入、民間工事への普及拡大、電子化の推進を柱とする建退共制度に関する報告書の大筋を固めた。報告書では、日額320円で単一の掛金日額を10円単位で事業主が上乗せできる複数掛金制度の導入を提言。建退共の普及が進んでいない民間工事では、建退共掛金を必要経費として見積書に明記するよう、発注者に働き掛けるとした。2030年度末にも全面的に電子化するとの目標も初めて提示する。
関係団体や有識者でつくる検討会議を9月18日に開き、今後の建退共制度の在り方に関する報告書案について大筋で了承した。
報告書案では、掛金日額320円を37年間納付しても、退職金額が400万円に満たない建退共の魅力を向上させるため、元請け・事業主が掛金を上乗せできる複数掛金制度の導入を提言した。退職金を最低でも1000万円とできるよう、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル区分に応じ、事業主が柔軟に掛金日額を選択できるようにする。
複数掛金制度を採用するためには、電子ポイント方式の導入を原則とする。システム上は10円単位で掛金日額を設定できるが、最大掛金を800円とする標準モデルも示し、事業主が掛金日額を選択することも認める。CCUSの技能レベルのほか、厳しい労働条件(災害復旧、危険度)での作業や多能工として現場に従事する技能者の掛金日額を上乗せしてもらう。
報告書案では、民間工事への建退共の普及拡大についても提言。改正建設業法では、建設業者に適正な施工を確保するための必要経費を見積書に記載する努力義務、注文者にこの見積書を考慮する努力義務を課している。建退共の掛金をこの必要経費と位置付け、元請け・下請けが見積書に明記するようにする。
見積書の内訳に建退共の掛金を明記していることを国土交通省の「建設Gメン」の確認項目とし、指導を強化。掛金を必要経費として支払うよう、民間発注者に働き掛ける。
CCUSに登録していても、建退共に未加入の一人親方が加入しやすいよう、「CCUS建退共事務組合(仮称)」を設立して掛金納付の手続きを代行できる仕組みを構築する。
■30年度末にも全面電子化
21年度にスタートした電子ポイント方式は、複数掛金制度の前提となることから、電子化が困難な事業者への支援を手厚くする。社会保険労務士と連携して電子ポイントの入力を代行したり、電子ポイントを導入済みの企業からアドバイザーを派遣したりする。
電子システムをリニューアルする10月から26年3月までの間、退職金ポイント購入総額の2%(CCUS連携の現場は5%)を還元するキャンペーンも実施する。
電子化に慎重な中小企業を支援することで、30年度末から35年度末の間に全面的な電子化を目指すとした。