まちセンの公共建築工事発注者支援業務

静岡
 2024年4月1日現在の総務省の調査によると、政令市を除く静岡県内自治体33のうち建築技師不在の自治体は11、一桁の自治体は12ある。このような中、静岡県建築住宅まちづくりセンター(柳敏幸理事長)では公共建築工事の発注者支援業務に取り組んでいる。1級建築士132人(9月1日現在)を有する技術者集団として、静岡県内唯一の公共工事発注者支援認定機関として、中立的に対応にあたっている。 <「公共工事発注者支援機関(建築)」認定>  05年4月1日の「公共工事の品質確保の促進に関する法律」施行に伴い、静岡県建築住宅まちづくりセンターは、公共工事支援業務を開始。同センターが市町に対して技術的支援を行う中、14年6月には同法改正を受け、機関の発注関係事務を評価し認定する「品質確保に関する推進協議会」が国土交通省中部地方整備局管内で発足。15年3月6日、同センターは「建築」では静岡県内唯一の「公共工事発注者支援機関」認定を受けた。  認定期間は評価の翌日から3年後の年度末。継続には再度評価が必要となり、同センターはその後も認定を継続して受け、現在は24年1月に更新認定を受けている。認定発注者支援機関として、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」第7条に規定する発注関係事務を実施している。 <公共建築工事支援業務の内容>  ▽概算事業費(設計・建設に要する費用)算出▽設計委託発注に伴う発注図書などの作成(設計委託料の算出、特記仕様書の作成、要求水準設定など)▽設計への技術的助言、設計成果品の検収▽工事施工者選定前の発注図書作成▽工事監理での監督業務支援▽工事の検査支援、完成図書の検収▽営繕積算システムによる単価入力(設計書作成支援)▽施設の劣化状況調査、修繕計画の作成支援―などを行う。  具体的には、建築事業での設計・建設に要する概算事業費算出や設計業務の発注のための特記仕様書、予定価格の算出と設計要求水準の設定などを支援したり、設計内容が要求している条件を満たしているかのチェックや工事費の積算内訳書や単価などを検収したりする。   施工中は自治体職員(監督員や検査員)による施工状況や使用材料の検査、確認申請への支援と施工図のチェック、竣工図の検収などを行う。  また、既存施設の劣化状況の調査や診断、修繕計画の提案などの他、耐震補強の設計支援・工事監理支援、事業の各段階での部分的な支援、電気・機械など設備の分離発注にも対応している。 <静岡県内自治体の建築技師>  県内自治体の建築技師減少について、同センターでは「年度初めに各市の建築職の採用状況などを聞くが、新規技術者の採用状況は厳しく、採用できなかった市が多い。また、退職者などの欠員補充ができない状況にもあり、若手職員の退職、定年退職前の退職者も増加していると聞く。建築技術者の減少は、公共建築物の品質の確保、適切な維持管理などに不安を感じる」としている。  24年度の同センターの公共建築工事支援業務は、伊豆市・伊豆の国市・磐田市・御前崎市・吉田町・松崎町などへの実績がある。自治体の建築技師数に比例するかのように、磐田市を除き建築技師が不在、もしくは一桁の自治体だ。 <自治体側のメリット>  自治体にとって、公共建築工事支援を受けるメリットには、自治体の建築技術者の不在や不足を技術力で補うとともに、総合評価落札方式やPFIなどの発注手法の提案や、他の自治体で採用した新たな取り組みの紹介などにより知識・経験不足を補えることが挙げられる。  また、小規模な自治体では、大規模プロジェクトは数十年に一度のことであり、ノウハウを有している職員が存在していない状況もある。プロジェクトの実施期間中だけ支援を受けることも可能なため、新たな職員採用をしなくて済む点も大きい。  同センターの支援担当者は、建築士などの有資格者であるとともに、自治体OBでもある。このため、議会、予算要求、債務負担行為など多くの行政手続きを経て実施される公共工事のスケジュールなどを把握しており、スムーズな事業進捗へのアドバイスも可能だ。