企業・現場間にDX化の壁 建設業政策の在り方勉強会

中央
 国土交通省の「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」の2回目の会合では、建設業経営や現場のDX化に当たり、企業間で採用するITツールの違いや、現場代理人ごとに対応が異なる点が壁となっていることが指摘された。個社としてだけでなく、建設産業全体でDXを推進することが検討課題として提起された形だ。経営事項審査で財務健全性以外に、労働分配率など「人」に着目するよう求める意見もあった。  勉強会は「2027建設業政策の原点」と銘打ち、求められる建設企業の姿やその評価基準を議論する場となっている。9月に開いた2回目の会合は、大手ゼネコンの経営をテーマに設定。建設業が市場や顧客だけでなく、国民・社会から信頼を得られるよう、あるべき企業の姿を有識者らが話し合った。  建設生産システムの合理化を巡っては、元請けがそれぞれ異なるITツールを導入することで、下請けに入る専門工事業者が元請けに合わせて複数のツールを選択する必要があり、非効率となっている現状が指摘された。同一の企業であっても、現場代理人の裁量でDXへの対応に差が出てしまうという課題もあった。  一方、別の委員は、DX対応に追われて施工管理が不十分になる恐れを指摘。20~30年後を見据え、高い品質の建設工事を次世代に引き継ぐための教育を検討するよう求めた。  この他、技術者制度が建設企業の採用、人事異動にどのような影響を及ぼしているか、検証が必要だとする意見も出た。  社会的な信頼を得るために求められる建設企業像についても議論した。公共工事を元請けで受注する建設業が受けなければならない経営事項審査について、財務健全性に重点を置いた現行の評価手法に対し、労働分配率や処遇、技術者・技能者の雇用など「人」にも着目し、政策を検討するよう促す意見が出た。健康や環境への配慮など、利益とは別軸で企業の経営を考えるよう提案する声もあった。  この他、大手と中小とで、地方の人材の獲得競争が激化していることを問題視する意見があった。中小建設業が後継者難に陥っている現状に触れ、M&Aをサポートする体制を求める意見が出た。災害時に使用する大型建設機械の保有支援など、地域建設業が災害対応力を高められるよう支援できる仕組み作りを求める意見も出た。