新・住生活基本計画 人生百年時代のストック市場へ

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 国の総合的な住宅政策の柱である住生活基本計画は、社会経済情勢の変化などを踏まえ、おおむね5年ごとに見直されてきた。社会資本整備審議会の住宅宅地分科会が次期計画について議論を重ねている。来年3月の閣議決定を前に、11月上旬にも中間とりまとめが公表される。新たな計画では、今から25年後の2050年に目指す住生活の姿を描くという。  日本の人口は減り続け、高齢化は加速する。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、高齢単身世帯(65歳以上の人が1人で暮らす世帯)は約903万世帯で、過去最多となった(25年6月時点)。50年には約1084万世帯に達する見込みだという。人口や世帯構成の変化は、住宅の間取りを含め市場全体に与える影響が大きい。年齢を重ねると、地域とのつながりが希薄になる人も少なくないと聞く。医療や介護の充実だけではなく、高齢者が孤立しない、そんな居場所づくりの視点が住宅にも求められる。社会の変化を先取した、実効性ある施策を新計画に盛り込んでほしい。  ストック社会における住宅政策を真剣に考える必要がある。2000年に住宅品確法が施行され、バリアフリーや省エネの性能などは向上してきた。とは言え、良質なストックによる流通市場の形成という点では、今なお課題が多い。施策の推進では、住環境の変化を考慮しなければならない。コロナ禍を経て二地域居住・地方移住など住まい方は多様化した。地震や台風への備えといった災害対策も急がれる。  さらに、資材価格や人件費が高騰して住宅価格は上昇。賃貸住宅の家賃も上がっている。住みたい場所に住宅を買えない、借りられないのは悲しいことだ。安心、安全で快適な住宅を供給できる社会になってほしいし、そうした社会を実現するための施策を求めたい。  住宅を建てる担い手の不足も深刻だ。大工の高齢化が進み、就業者はこの20年間で半減した。生産工程の効率化だけでは到底解決できない。技能者や技術者の確保と育成が急務だ。  人生100年時代を迎えた。ライフステージに適した住宅へと住み替え、住み継がれる良質なストックを形成すべく、流通市場を支える制度の整備が求められる。住宅は生活基盤そのもの。快適で豊かな生活を支えるために、住宅だけでなく、福祉や医療など他分野と連携した施策の推進が必要だ。