発注者の積算、本当に正しいの!? 予定価格の上限拘束性って必要?

中央

土木学会報告書から建通新聞社が作成

このコーナーでは、ベテランたぬき記者の「ぽんせつ先生」が、知りたがりの九官鳥「キューメット」の質問に答えます(Q=キューメット、P=ぽんせつ先生)。 Q.「予定価格の上限拘束性」っていったいどんな意味なの? P.発注者が費用をあらかじめ積算した予定価格は「ここまでなら支払います」という上限として機能します。公共工事や業務委託の入札では、予定価格を下回ることを前提として、最低価格を提示した者が落札者となることができます。予定価格を1円でも超えた金額で入札すれば、応札者は失格になります。会計法・地方自治法の関係法令で定められている競争入札の原則です。 Q.上限は分かるけど、拘束性ってどういうこと? P.発注者の積算が施工実態を反映した正しいものであればこの原則は機能しますが、実際には施工に必要な金額よりも低い価格で積算したり、誤って積算したりすることがよくあります。こうしたケースでは、全ての応札者が予定価格を超える金額で応札すれば不落になりますし、予定価格を下回る金額で応札した受注者が利益を確保できないこともあります。 Q.だったら原則を変えればいいじゃない。 P.そうだね。確かに、予定価格の上限拘束性を廃止すべき、という声はかなり昔からあります。特にここ数年は、資材価格や労務費が大きく上昇しています。価格上昇分が予定価格に適正に反映されないと、上限拘束性が邪魔をして、不調・不落や不採算工事が増えるおそれもあります。  海外に目を移しても、上限拘束性を定めていない例は多くあります。発注者が予算の範囲内と判断すれば、最低価格であれば予定価格を超えても落札できるわけです。ただ、会計法を所管している財務省にこのルールを見直すつもりはないようです。 Q.入札不調や不採算工事はなくならないってこと?  そうでもありません。土木工事や建築工事の積算基準は、施工の実態を調査して受注者が利益を確保できるように毎年見直されています。予定価格に上限拘束性があるのであれば、予定価格そのものを高く積算すればいい、ということです。要するに、予定価格が適正であれば問題ないという考え方です。  ただ、施工実態の変化を積算に反映すると言っても、そこには限界があります。土木学会の小委員会では、昨年6月にまとめた報告書の中で、入札不調・不落の発生率が高まった場合、予定価格に7~10%を上乗せする仕組みを提案しています。 ※もっと知りたいと思うニュースのキーワードがございましたら、hensyu@kentsu.co.jpまでお知らせください。