価格転嫁制度「知っている」6割 小規模企業に周知急ぐ

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 国土交通省が全国の建設業者を対象に、資機材価格や労務費が高騰した際の「価格転嫁ルール」の認知度を調査したところ、「知っている」との回答は全体の59・8%となった。完工高50億円以上の企業では認知度は84・4%と高かった一方、5000万円未満の小規模企業では22・4%にとどまった。国交省は特に小規模企業に対し、ルールを浸透させ、活用を促す。  価格転嫁ルールは、改正建設業法に基づき2024年12月に施行された。建設工事の請負契約に先立ち、価格変更の要因となり得る「おそれ情報」を注文者へ通知する義務を建設業者に課すとともに、請負代金などの変更方法を契約書に記載する事項として明確化。実際に価格高騰が発生し、契約書の記載内容に基づいて建設業者が価格変更を提案すると、注文者には誠実に協議に応じる努力義務が課される。  今回の調査では、法施行直後となる25年1月1日時点の状況を聞いた。建設業全体では、「聞いたことがあるが内容は分からない」が33・5%、「知らない」が6・7%で、全体の約4割で認知されていなかった。完工高別では、3億円未満の企業で「知っている」との回答が半数未満となっている。  回答者が元請けとなった工事で、契約変更に関する条項が契約書に盛り込まれたかも調査。「全てあった」「おおむねあった」を合わせると60・2%で、前年度調査から10・2ポイントと大きく上昇した。「ほとんどなかった」「全てなかった」との回答も合計34・7%あった。  実際に物価変動などの影響を受けて契約変更協議を行ったことのある建設業者は、前年度から3・5ポイント増えて41・7%だった。「物価等の変動を受けた工事はなかった」との回答は18・2%と3・2ポイント減っており、物価の影響を受けて協議に踏み切る建設業者の増加がうかがわれる。  協議の申し出を行ったが「応じてもらえなかった」(10・5%)、物価の影響はあったものの「協議の申し出を行わなかった」(29・6%)といった回答の割合は前年度と大きく変わらなかった。  価格変更の協議を行った建設業者のうち、「全て契約変更が行われた」と回答したのは22・5%、「一部契約変更が行われた」が72・3%と大半を占めた。  一方、不動産デベロッパーやハウスメーカー、鉄道会社といった民間発注者への調査を見ると、大規模な企業が多かったこともあり、価格転嫁ルールについて「おおよその内容を知っている」との回答が93・2%を占めた。  元請け建設業者との契約について、物価高騰に伴う変更条項の有無を聞いたところ、「あった」との回答は66・1%となり、前年度から10・9ポイントと大きく上昇した。変更条項に基づき、実際に契約変更協議を行ったことのある民間発注者は75・5%で、9・2ポイントのアップ。建設業者からの申し出がなかったため「協議を行わなかった」との回答は12・2%だった。「物価等の変動を受けた工事はなかった」との回答も12・2%あった。  協議した民間発注者のうち、「全て契約変更を行った」としたのは27・0%で、3・4ポイントのアップとなった。「一部変更契約を行った」は59・5%で、4・1ポイント減少した。