災害時に役立つ応急組立橋 「物品」発注で落札率低下 

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連結部分が破損した伊達橋の応急組み立て橋(写真中央、提供・国土交通省)

 豪雨や地震といった自然災害で道路が被災すると、その後の復旧作業には大きな影響が生じる。特に橋梁が流出、損傷した場合、支援物資の輸送が滞ったり、孤立集落が生まれたりするためだ。こうした事態を回避するため、国土交通省が確保している「応急組み立て橋」には、毎年のように地方自治体から貸し出し要請がある。自然災害の激甚化・頻発化で応急組み立て橋への需要が高まる一方、製造・架設する受注者側からは落札率の低下を問題視する声が挙がっている。  応急組み立て橋は、災害によって橋が通行できなくなった際、交通路を迅速に確保するために設置する仮橋で、短期間で設置できるのが特徴だ。全国の地方整備局で計59橋を保有しており、橋長16㍍のものから、50㍍に至るものまである。  被災した地方自治体は、地方整備局の出先事務所や、TEC―FORCEの先遣隊となる災害対策現地情報連絡員(リエゾン)などを窓口として、貸し出しを要請できる。橋梁を現地まで運搬するための費用や人員、橋梁を現地で組み立てる人員は、地方自治体が用意する。  近年の事例では、2022年に発生した最大震度6強の地震で伊達橋が破損し、福島県伊達市が応急組み立て橋と民間からのリース仮設橋を組み合わせて仮橋を設置した。21年の豪雨で落橋した青森県むつ市の小赤川橋も、応急組み立て橋を活用して被災後1週間で仮橋の架設を完了した。  自然災害が激甚化・頻発化しているだけでなく、橋梁の老朽化も進んでいる中、「毎年、応急組み立て橋の要請がある」(国土交通省道路局環境安全・防災課道路防災対策室)という。  応急組み立て橋に対するニーズが高まる一方、低価格での受注が増えている。応急組み立て橋は、災害資機材に含まれることから、「物品」として発注される。22年に全国で発注された入札案件9件の落札率は70~90%と比較的高かったが、その後は落札率の低下が進み、25年には60%程度の案件が多くなった。  応急組み立て橋を製造する鋼橋メーカーからは、落札率の低下による品質の低下を招くとし、「物品」ではなく「工事」での発注を求める声が挙がっている。低入札価格調査基準価格は、物品であれば予定価格の60%だが、工事であれば75~92%とより高い価格での応札が可能になるためだ。製造と納品後の架設訓練を一体化した「工事」として発注すれば、橋の品質を確保し、災害時にも迅速かつ確実に架設工事を完了できるとの主張もある。