物価上昇で「実質事業量」減少 工事件数が減るのはナゼ?

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このコーナーでは、ベテランたぬき記者の「ぽんせつ先生」が、知りたがりの九官鳥「キューメット」の質問に答えます(Q=キューメット、P=ぽんせつ先生)。 Q.10月からまた値上げ。ぼくの生活も苦しいよ。 P.10月1日から飲料や食料品など3000品目以上が値上げされています。原材料費やエネルギーコストが上昇し続けていることが主な要因です。 Q.給料が増えても追いつかないね。 P.原材料費の上昇は建設コストにも大きな影響を与えています。建設資材は2021年1月と比較して37%、労務費は21年3月から23%上昇しています。公共事業では、価格上昇によって予算が足りなくなり、当初の計画通りに工事を進められなくなったり、数量や工事件数が減少したりする「実質事業量の減少」と言う困った問題が起きているんだ。 Q.お金がかかるようになったのに予算は増えていないの?  政府の当初予算に盛り込まれた公共事業費は、物価が上昇局面に入った21年度以降も6・1兆円のままです。補正予算を加えても大きくは変わっていません。建設コストが同じ時期に25~29%上昇したことを考えると、仮に同じ事業量を確保しようと考えれば、当初予算6・1兆円を7・6~7・8兆円にする必要があります。   Q.物価上昇で支払うお金も増えてるんだから、税収も伸びてるんでしょ。予算も増やせるはずじゃない。 P.少なくとも今まではそうはなっていません。政府は来年度予算の概算要求に先立ち、賃金や物価上昇の影響を要求額に反映するよう、各省庁に指示しました。ただ、個別事業はそれでいいかもしれませんが、予算の総額が増えない限り、実質事業量が減少することに変わりはありません。 Q.やるべき公共事業ってたくさんあるんでしょ。事業が遅れちゃうんじゃないの? P.自然災害に備えるための国土強靱化対策や、インフラの老朽化対策など大急ぎで進めなければいけない事業は多くあります。それだけでなく、受注者の採算性への影響も心配されます。予算が不足して工事が打ち切りになったりすると、資材や人員にロスが生じます。工事規模が縮小すると、固定的な経費が工事費を圧迫し、利益率の低下も懸念されます。 もっと知りたいと思うニュースのキーワードがございましたら、hensyu@kentsu.co.jpまでお知らせください。