耐震化率の調査方法「見直しを」 強靱化中期計画の実効性確保
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政府は10月23日、国土強靱化推進会議を開き、有識者らと6月に決定した第1次国土強靱化実施中期計画の実効性確保策を議論した。大都市部以外も含めて住宅・建築物の耐震化を着実に進めるため、福和伸夫名古屋大学名誉教授が耐震化率の把握方法の見直しを提言。現行の5年に1回の調査だけでなく、不動産登記簿なども活用して毎年度の進捗を把握するとともに、大規模災害時の救援が困難な地域で、より積極的に耐震改修を促す仕組みを求めた。
2026年度からの5年間を対象とした第1次国土強靱化実施中期計画には、期間中に耐震性が不十分な住宅を「おおむね解消」するとの目標を掲げた。耐震化率は23年度時点で約90%となっており、不十分な住宅は約570万戸に上る。
耐震化率は5年に1回の住宅・土地統計調査に基づき、全国平均の値を算出している。福和教授は毎年度、耐震化の進捗を調査する必要性を指摘。中小自治体や大都市の周縁部を含めて耐震化の遅れを把握する必要もあるとした。
その上で、南海トラフ地震では救援の困難な孤立地域が多発するとし、住宅の持ち主からの申請ベースではなく、自治体からの能動的な働き掛けによる耐震補助の仕組みを求めた。耐震基準を満たしていても、地震後に建物の使用を継続できるとは限らないことを周知し、より高い性能の住宅整備を誘導するよう注文した。
国土交通省は自治体によって耐震化率が大きく異なる実態を説明。耐震化率を算定していない自治体もあるとし、7月に固定資産課税台帳や自治体の耐震診断補助の結果を用いて耐震化率を推計するよう、全国の自治体に要請したことを報告した。調査方法の見直しについても「検討したい」と応じた。
土木分野では、国交省が気候変動に伴う外力の増大で、河川整備を加速させる必要性を説明。河川改修やダム整備といった根幹的な対策に加え、他機関と連携する流域治水を生かした対策に取り組むとした。有識者からの指摘を踏まえ、河川整備と土地利用規制の連携強化も検討するとした。
会議ではこの他、文部科学省が地域の避難所となる体育館を対象とした空調設備の整備を進め、24年度時点で18・9%にとどまる設置完了率を30年度までに68・1%、35年度までに100%に引き上げるとの目標を説明。バリアフリー化やトイレ洋式化は30年度までに完了させる。
実効性確保策は「国土強靱化年次計画2026」に盛り込み、26年6~7月に決定する。
